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連載・特集

医療崩壊の足音 -鳥取市立病院小児科休止の波紋-

 鳥取県内の地域医療が大きく揺らいでいる。医師は足りず、診療は縮小が続く。今年十月から小児科を休止するという鳥取市立病院のかじ取りは、深刻な事態を象徴する決断だった。今、地域の医療現場で何が起きているのか。現状を取材した。

2008/07/29の紙面より
【上】集約化の衝撃

大病院がまさか 足りぬ医師一層激務に

小児科の待合室はいつも親子連れでごった返す=25日、鳥取市の市立病院
 「将来的にはさらなる増員も考えています」

 四月十六日の昼下がり。鳥取市立病院を訪ねた鳥取大学医学部(米子市)小児科の教授らが本論に入る。

 市立病院の小児科医は三人で、いずれも鳥取大からの派遣。この時はすでに、一人が開業による退職を申し入れていた。

 来春以降の補充にめどが立ち、さらに小児救急の拠点として体制を強化する。教授らの説明はこうだった。

 向き合った市立病院の武田行雄事務局長は胸をなで下ろす。「何とかやっていける」

 方針が一転したのはそれから四十日後。医学部の担当者が残り二人を引き揚げ、県立中央病院(鳥取市)へ異動させると伝えてきた。

 拠点病院に医師を集める「集約化」。小児科は休止が免れなくなった。

受け皿どうなる

 五月二十六日、鳥取大医学部。県立中央病院の武田倬院長は食い下がった。

 「市立病院の小児科がなくなると本当に困るんです」

 だが、決定は変わらない。

 市立病院の患者の半分でも中央病院が診療することになれば、激務は避けられず、退職者も続出しかねない。

 「せめて一人でも二人でも小児科医を集めてもらわないと、今度はうちがつぶれる。東部の医療がぐちゃぐちゃになります」

 市立病院の小児科では昨年度、延べ一万四千五百六十一人が受診、七千九十八人が入院した。休止となればその受け皿はどうなるのか。

 鳥取生協病院(鳥取市)の富永茂寿事務長は言う。「地域の人たちが医療を受けられないことは不幸なこと。何か対応策を検討せざるを得ない」

 一方、医師の引き揚げは、鳥取大にとっても苦渋の判断だった。

 医師二人体制では、当直や自宅待機が増え、疲弊感は増す。医学部付属病院の豊島良太院長は「医師がつぶれるのは目に見えている。集約化はやむを得ない」と窮状を訴える。

利用者ショック

 市立病院は八頭、若桜町方面の受け皿にもなっている。小児科休止が報道され、利用者らに衝撃が走った。

 「大きな病院でまさかこんなことが起こるなんて」と驚く小谷真理さん(34)=同市末広温泉町=。三歳と六カ月の子を持つ松本妙子さん(36)=同市桜谷=は、ひとたび休止すれば再開は難しいと考える。「家から近いので夜に高熱が出たときも利用していた。何とかしてほしい」と訴えた。

 小児科の医師不足は、市内にある他の総合病院も例外ではない。鳥取生協、鳥取赤十字はいずれも二人。そしていずれも五十代。残された医師は診療をどう担っていけばいいのか、戸惑いは大きい。

 鳥取生協の森田元章医師(59)は診療歴三十五年。夜間は一日置きに待機する。携帯電話を手放すことはない。「年を取るほど楽になると思っていたが、逆に忙しさは増している。多くの医師が限界を感じている」と話す。


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