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労働力資源の再認識を

2008年7月29日

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 常識は社会での偉大な判断基準である。判断に迷うときには常識をよりどころにすると分かりやすい。英語でコモンセンスというように、国民の多数に共通する知識である。その座標軸からズレると、見当違いを起こしかねない。今回発表された「21世紀版前川リポート」は、まさにこの座標軸から離れている。

 このリポートは、専門家の議論を経てまとめられただけに、その内容に特に異論はない。しかし、これを読んで突き動かされるものがまったくない。今われわれの置かれている社会は、政府、公務員、産業に対する不信感や、生活の先行きへの不安感が根強くあり、希望の持てない状況にある。市場経済化と競争激化のもたらした拝金主義の社会をどう脱却し、人間主義の社会をどう実現するのか、リポートで議論してもらいたかった。

 とくに懸念するのは、派遣労働、非正規社員の増大、賃上げの抑制など働く人を差別する社会の風潮になってきたことである。

 もともと日本人は勤勉である。こんにちでも過労死が出るほど働く。伝統的に一生懸命に働くことは、人間修養と同じ意味を持っている。普請という言葉が意味するように働いてもらうことには感謝の念がこもっていた。この日本の資本主義精神の原像が崩壊してきたのではないか。これは難病の始まりである。

 質の高い労働価値があってはじめて技術や資本力が生きてくる。派遣業などの規制を強化するだけでは問題は解決しない。こんにちは経済基盤のありようが問われている大転機である。人間を大切にするシステムや多様な働き方づくりを積極的に進めない限り、病気はさらに進行する。(共生)

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