公立病院改革/地域医療守る創意工夫を
地方自治体が運営する全国の公立病院が、総務省の公立病院改革ガイドラインに従い、経営健全化に向けた改革プランを2008年度中に作成する。
特に市町村が運営する公立病院は、多くが経営難に直面している。プランには病床利用率などの指標について数値目標を盛り込むことも義務付けられ、各病院はプランに沿って3年以内の黒字経営化を目指す。
ガイドラインは、病床利用率が過去3年連続で70%未満の病院に、病床数の削減や診療所への転換など抜本改革を迫る。例えば宮城県内の公立病院の病床利用率は平均77%(06年度)で、50%前後に低迷する病院も多い。ハードルはかなり高いが、地域医療を守るためにも、各公立病院にはこれまで以上の経営努力と創意工夫を求めたい。
全国で公立病院経営が赤字の自治体は77%(06年度)。東北では、公立病院を運営する市町村が一部事務組合を含め91団体あり、このうち76%の69団体で病院経営が赤字だった。医師不足などを背景に患者数が減少する一方、人件費など経費の削減は進まず、多くが慢性的な赤字経営に陥っている。
自治体の一般会計から助け舟を出してもらえる恵まれた環境が、経営力を弱める要因になってきたとの指摘もある。
病院などの公営事業は自治体の「隠れ赤字」の原因になっており、国は自治体財政健全化法で、一般会計に公営企業会計も加えて赤字割合を示す連結型の指標の公表を、08年度決算から自治体に義務付けた。ガイドラインによる公立病院経営へのてこ入れは、市町村の財政破たんを防ぐための自治体財政改善策の一環という側面も持つ。
東北では06年度、公立病院を運営する28団体(全体の31%)が病院経営で不良債務を抱えた。各県の不良債務総額は青森の156億6000万円がトップ。秋田は最少の7700万円だったが、「一般会計からの繰り入れでしのいだ」(秋田県市町村課)というのが現実だ。
改革プランには、経常収支比率も数値目標に盛り込むよう義務付けられている。ガイドラインは100%を上回る目標設定を想定しているが、東北各県平均の経常収支比率(06年度)は96.6―90.9%。病院によっては50%前後という深刻な状況もあり、改革プランづくりは容易でない。
東北の公立病院は多くが過疎地の地域医療を支えている。経営効率だけで判断するのは住民サービス維持の点で危険であり、ガイドラインの運用には柔軟性も求めたい。
ただ公立病院側に、最後は自治体財政が赤字を補てんしてくれる、といった甘い体質があるとしたら、一掃しなければならない。
経営破たん寸前だった公立志津川病院(宮城県南三陸町)は地道な医師確保と経費削減が実を結び、1994年に10億円を超えた不良債務が、07年度決算で全額解消される見通しとなった。過疎地の公立病院も経営感覚次第で再生できることを、志津川病院は教えてくれた。