世界大手の買収ファンドである米コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)が年内にも、株式をニューヨーク証券取引所に上場する。
KKRは株の上場で買収資金を調達しやすくするほか、情報公開を通じて事業の透明性を高めることをねらっている。買収時に借り入れを導入して投資利回りを高めるファンドにとって、米国での貸し渋りは逆風だ。それだけに、株式市場からの目先の収益圧力に屈することなく、買収した企業を改革し、価値を上げていけるかどうかに注目したい。
「ファンド革命」という言葉を世界の企業や市場関係者が口にし始めたのは2年ほど前のことだ。世界的なカネ余りを背景にファンドが急成長し、企業にとっては資本市場と並ぶ資金源になった。経済のインフラとしての役割が増したのだ。
企業は短期的な収益を要求しがちな株式市場より、ファンドによる買収で株を非公開化したほうが、一時的に負担が避けられない大型設備投資などの長期戦略を取りやすい面もある。1976年に創業、6兆円を超える資産を持つKKRは買収ファンドの象徴的な存在だった。
株の上場は、買収した企業を長期的に改革するというファンドの戦略を脅かす恐れもある。ファンドが目先の投資収益を求める株主の声に押され、改革が不十分な段階で売却したり、単なる値幅取りをねらった投資をしたりする可能性が生じる。
約20年前、KKRは割安な企業を買収して売却する金融技術頼みの姿勢を「野蛮人」と批判された。その後は事業の専門家を大量採用して買収先に派遣、長期的な改革で価値を上げる戦略に転じている。今回「平均の投資期間は5年以上」などと改めて強調したのもこのためだ。
サブプライムローン問題は、ファンドの活動にブレーキをかけた。トムソン・ロイターによると、世界のM&A(合併・買収)でファンドが絡んだ比率は昨年の24%から今年は16%に落ちている。
だが、逆風ばかりではない。米国では企業への投資も手掛ける投資銀行の規制論が盛んだ。自己資本比率を高める方向になれば投資余力は落ち、ファンドの存在感は高まる。企業改革の役割も重くなるはずだ。