政界の閉塞(へいそく)状況はいつまで続くのか。そういら立っている人は多いだろう。先の北海道洞爺湖サミット(主要国首脳会議)後、与党内では福田康夫首相が内閣改造するかどうかに、ひたすら関心が集まる日々が漫然と続き、実際には政治は何も動いていないように見える。
原油や食料品の高騰など福田首相が重視する「暮らし」が脅かされている今、毎日新聞は早急に国会を開き与野党が議論するよう求めてきた。当初、首相も8月下旬の臨時国会召集を検討していたが、これに待ったをかけているのが主に公明党という。なぜか。
来夏の東京都議選との「共倒れ」を恐れる公明党は衆院解散・総選挙の時期を年末から年明けへと照準を定め始めているという。
国会の8月召集は来年1月、期限が切れる新テロ対策特別措置法延長のため審議時間を確保する狙いもある。だが、公明党はこの延長にも慎重で、仮に衆院で再可決すれば世論の反発を招き、解散はさらに遠のくと見ているようだ。だから、国会召集を急ぐ必要はないとの主張になる。このほかにも同党が独自色を出す場面が目立ってきている。
これを即、「福田離れ」と見るのは早計だろう。ただ、自民党内にも「支持率が低迷する福田首相で衆院選が戦えるのか」との声が出始めているのは確かだ。
そんな中、首相は自前の内閣をつくり、自らの手で解散する決意を示すことができるだろうか。改造と国会召集時期は「だれが、いつ」という衆院解散問題と直結してきている。
早期の解散につながるのなら歓迎すべき話だ。しかし、今の動きは、いずれも自分たちの選挙をどう有利に進めるかという政治家側の事情によるものだ。
福田首相も、どうしたら政権を維持できるかで迷っているのかもしれない。だが、面倒な話を決断せずに先送りする体質にこそ国民は不信感を募らせているのではなかろうか。そして首相にも与党にも必要なのは「国民のために何をするか」を考えることであり、それを実行するために選挙で信を問うという視点だ。順番が逆なのだ。
閉塞状況は民主党も同じだ。小沢一郎代表の3選が有力視される9月の代表選。とかく政策がばらばらという不透明感を代表選挙を通じてぬぐい去ってほしいと考える国民は多いだろう。ところが、「無投票は避けるべきだ」との声が党内でも強まりながら、有力候補者が一向に手を挙げない状態が続いている。
先の通常国会で審議拒否を宣言したからか。この時期、野党が早期の国会召集を政府・与党に求めないのも不思議でならない。民主党も「党内の亀裂回避」といったお家事情ばかりが優先していないだろうか。
もやもやを晴らすには国民の目線で考えることだ。
毎日新聞 2008年7月29日 東京朝刊