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2008年7月29日

 金沢の中心市街にある茶屋街を濁流が襲った。昭和20年代後半に相次いだ浅野川洪水の悪夢が繰り返されるとは思ってもみなかった

現在の浅野川にかかる小橋や昌永橋など多くの橋は昭和30年前後の完成である。20年代の水害で老朽橋が流失して同時期に復旧したからである。橋の架橋年から都市水害の集中期がわかる

上流で流された橋の残骸(ざんがい)が下流の橋にぶつかり次々押し流して行く。かつて主計町の風情を誇った先代「中の橋」も1953(昭和28)年の水害で失われた。今回の濁流は当時の恐怖をよみがえらせた

以来55年。河川工事が進み、街中に濁流渦巻くことなど2度とないと思っていた。が、最近は短時間に特定区域を襲う豪雨が増えた。その新しい型の洪水が伝統的景観の茶屋街を襲ったのであり、深い教訓を含んでいる

治水工事と同時に街も郊外もコンクリート化され、かつて雨を蓄えた水田は「天然ダム」の機能を失っている。水害の原因は社会とともに形を変えているのに街中の堤防はほぼ昔のままだ。今回の洪水は時代に取り残された治水を浮き彫りにしたのではないか。


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