心地よい風がほおをなで、カエデやサクラなどの木々の枝を揺らしていた。都市再開発で造られた緑の空間「風の道」である。
東京都品川区のJR山手線・大崎駅近くに、三十階建てビルの二階部分のテラスを利用してできた。約百メートルにわたって木々が植えられ、草花が茂る。遊歩道が通り、横にはオープンカフェもある。
風の道は、都市部の気温が高くなる「ヒートアイランド」対策として考えられた。地域全体でビルの配置を工夫し、東京湾からの海風の通り道を確保するとともに、緑化して空気の温度上昇を抑える狙いだ。
大崎駅周辺で官民が進める大規模な都市再生構想の一環でもある。構想は「心地よい涼しい夏の夜を取り戻す」と銘打つ。この風の道が目に見える最初の成果であり、昨秋のオープン以来初めての夏を迎えた。実際にどこまで都市を冷やす効果があるのか、近く測定するという。
風の道を確保する都市計画は、ドイツなどで取り組まれてきたが、日本でも広がり始めた。大阪市は本年度、涼しい海風を取り込む「風の道ビジョン」づくりを始めた。名古屋市でも提言などの動きが出ている。
根底には、都市計画はもっと自然を生かすべきとの思いがある。瀬戸内地方を含め、こう猛暑が続く中では、もはや不可欠な考え方だろう。