埼玉県の主婦、加藤久美子さん(43)はマイカーを手放してから約4カ月になる。ガソリン代が値上がりし、車の維持費もかさんできたため決断した。今は複数の人が車を共同利用するカーシェアリングを利用している。
週末の日帰り温泉や、買い物などにひんぱんに車を利用していた加藤家の毎月の維持費は▽駐車場代2万5000円▽ガソリン代3万~5万円▽保険代1万7000円--などと計8万~10万円。ところが、カーシェアリングにしてから月2、3万円に減った。
買い物は自転車を利用している。加藤さんは「随分無駄をしていたんだなあと思った」と話す。
マイカー派は特に頭が痛いガソリンの値上げ。旅行や帰省費用がかさむ夏こそ、節約を考えたい。一方法としてカーシェアリングの利用者が増えている。札幌や埼玉など全国8カ所で事業展開しているウインド・カー(本社・札幌市)は「以前は車のない人が中心だったが、ここ半年くらいは車を手放した人の入会が目立っている」。4月以降は月20~30人増え、6月末で会員は300人近くになった。
「ステーション」と呼ばれる場所に車を置き、利用者はネットや電話で申し込む。距離と時間で料金が積算される。月会費は保険料込みで▽3000円▽8000円▽1万5000円▽2万5000円--の4種類。「1回2時間、週4回程度の利用なら8000円以内でおさまる」という。
徐々に広がるカーシェアリングだが、交通エコロジー・モビリティ財団によると事業展開しているのは全国19団体。利用できる人は限定される。「誰でもできる」と、JAF(日本自動車連盟)が勧めるのは、ガソリンが節約できて環境にもやさしい「エコドライブ」だ。
エコドライブには、▽急発進・急加速はしない▽不要なアイドリングはしない▽使わない荷物を降ろす--などいろいろあるが、最も重要なのが「ふんわりアクセル」。省エネルギーセンターの調査によると、ガソリンの消費割合で最も大きいのは発進時の38%。次いで運転中の35%だ。
ふんわりアクセルは、発進時はジワーと徐々にアクセルを踏み、運転中は車間距離を十分取ってアクセルを一定に保ち、減速時はアクセルから足を離してエンジンブレーキを活用する。JAF東京支部の佐藤秀行・交通環境係長は「お年寄りや赤ちゃんを乗せて運転する感覚」と話す。
JAFは昨年、全国30会場でエコドライブ講習会を実施。参加者334人の講習前後の平均燃費を調べたところ、約28%改善された。
記者もエコドライブを習ってみた。公道を3・6キロ走行。平均燃費が1リットル当たり11・7キロだったのが、16・7キロと約40%改善し、ガソリン消費量は約30%減った。仮に月50リットル、年間600リットルを使うとすると、180リットル減る。1リットル180円なら年間3万2400円の節約になる。
佐藤さんは「ふんわりアクセルはノロノロ運転ではありません。都市部では急発進・急加速をしても変わらない」という。
ガソリン高騰で電車やバスなどの公共交通機関の利用者が増えているようだが、インターネットの情報サイト「オールアバウト」で旅情報を担当する旅行ジャーナリストの村田和子さんは「ガソリン代が上がっても、4人家族の旅行なら車の方が安いケースが多い。ルートや有料道路の無駄をはぶけば値上がり分をカバーできる」と指摘する。
最もお得なのが高速道路のETC深夜割引。東日本・中日本・西日本の各高速道路が管理する高速道路と一部の一般有料道路が対象で、午前0~4時の間に1分でも対象区間を走行すると利用料金が4割引きとなる。地域によっては、高速道路が使い放題のフリーパスもある。
村田さんが勧めるのはインターネットのナビゲーションサイト「ナビタイム」。有料道路と一般道路を使用した場合のそれぞれの経路、所要時間などが出る。ガソリンスタンドの価格や、駐車場の空き情報もある。
また、地方のホテルや旅館では東京など都市部への送迎バスを運行しているところもある。無料か1000円程度の格安のケースが多いという。
村田さんは「旅行は行き当たりばったりではなく、出発前に少し手間をかけて調べることで、結構節約できる」と話している。【板垣博之】
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★ガソリン節約向けの便利サイト
●カーシェアリング
ウインド・カー http://windcar.jp/
オリックスカーシェアリング・プチレンタ http://www.orix‐carsharing.com/
マツダレンタカー・カーシェア24 http://www.cs24.jp/
●エコドライブ
JAF(日本自動車連盟) http://www.jaf.or.jp/eco/fr/index‐ecodrive.htm
●旅行
高速道路・ETC深夜割引 http://www.go‐etc.jp/waribiki/waribiki10.html
ナビタイム http://www.navitime.co.jp/
毎日新聞 2008年7月16日 東京朝刊