今年前半の最大の外交行事、洞爺湖サミットも終わり、国民も永田町の関心も内閣改造の有無、さらにはその先の解散総選挙に移っている。「外交は得意」と自負する福田康夫首相だけに、サミットでの議長としてのパフォーマンスが政権浮揚の契機と期待していたはずだ。サミット後の会見で福田は「激しくやり合う場面もあったが、多くの成果を生み出せた。充実した3日間だった」と、高揚感を持って総括していた。
ところが、世論の反応はさめていた。各紙の世論調査でも支持率は若干回復傾向にあるが、微増の範囲にとどまっている。毎日新聞の7月の調査では、支持率は1ポイント上昇し、22%に、不支持率は6ポイント減少し54%になった。またサミットで福田が指導力を発揮したかの問いには、6割以上が「思わない」で、「思う」(27%)を大きく凌駕していた。首相番記者からの「調査で・・・」という質問をさえぎり福田は「もう世論調査の話はいいよ」と言い残し、去った。
地球温暖化対策では「2050年までに温室効果ガスを半減する目標を世界で共有する」などの合意を得られたが、具体的な削減目標値は盛り込まれなかった。高騰する食糧、原油など緊急度の高いテーマへの有効策は見出せないままで終わった。
各紙の社説を読み比べてみても、「一定の前進」を評価する産経や読売に対し、毎日、朝日、日経は「危機感の共有から行動へ」「数字は一夜で消えたが」「G8は洞爺湖で問題解決力を示せたか」と、いずれも懐疑的だった。
福田の後見役を自任する森喜朗元首相は「大変よくやられた」と、手放しの褒めようで、「首相は自分の人事をやられたらいいのではないか」と、早期の内閣改造を勧める。各社の世論調査が公表されると、森は「もう(他の)タイミングはない」と7月後半の解散説を明言、「やらなくて後悔するよりも、やって後悔した方がいい」とまで言い切る。
その一方で、小泉純一郎元首相は「想像するに改造も難しい。改造した新閣僚が国民の支持を本当に受けられるか」「首相として最大の力の源泉は解散権と人事権だ。これに失敗したら退陣だ」と、早期改造には慎重だ。その一方で、小泉は「改造がある場合は、首相が自分の手で解散、総選挙をすると思う人が多くなっている」とも、語っている。
さらに小泉はこう言い切る。
「今はもう最悪、負けるのは分かっている。しかし引き延ばしたら選択の余地がなくなって本当に『追い込まれ解散』になる。だからその前に出来るだけ有利な時期を選んで解散する。これで失敗したら退陣せざるを得ない」
「乱気流に飛び込むようなつもりで必死に頑張る」と、福田は伊吹文明幹事長に語ったことがある。しかし、古くは田中角栄首相も74年の参院選で大きく後退した後、党内から噴出した金権政治批判を封じようと内閣改造に踏み切ったが、1カ月足らずで退陣に追い込まれた。以来自民党内では「政権の力が上向いているときの改造は、より強くするが、下降期の改造は弱体化を早める」が、格言として残っている。(敬称略)
2008年7月16日
7月16日 | 「一向に晴れぬ乱気流」 |