トリアージの運用に向け議論開始−消防庁
消防庁のトリアージ作業部会は7月28日、今年度の初会合を開催し、昨年度から検討してきた119番受信時のトリアージ(緊急度・重傷度による患者の選別)の運用に向け、具体的な議論を開始した。どのような場合にトリアージを実施するかや、それぞれの選別結果への対応方法などについて検討し、秋には精度向上のため検証も行う。座長には昨年度に引き続き、帝京大医学部救命救急センター教授の坂本哲也氏を選出した。
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トリアージ作業部会は、救急搬送業務の質の向上について議論する救急業務高度化推進検討会の下部組織の一つ。昨年度はトリアージの具体的なプロトコル(運用基準)について検討しており、アンダートリアージ(実際よりも優先度・緊急度を低めに判定すること)を少なくするための検証などについて議論してきた。
今年度は、検証されたトリアージを具体的に現場で運用していくための制度設計について議論する。トリアージを常に行うか、救急隊の出動数のピーク時だけに行うかや、ピーク時に行う場合はどの程度を「ピーク」と判断するかなど、今年9月から119番受信時のトリアージを開始する横浜市の例も参考に、地域の実情に合わせて運用できるような基準を検討する。全国的に一斉に行うか、一部地域に限定して試行するかも検討する。このほか、選別結果への対応として、「中」「低」と判定された場合の救急隊の編成や、到着が遅れることについての説明内容、救急隊の出動が必要ない場合の医療相談の在り方などについても検討する。 制度設計の議論と並行して、アンダートリアージが発生した場合の責任の所在など、法的問題の整理も進める。また、トリアージプロトコルの精度向上のため、9月には試行的に一部の消防機関の指令員を教育し、10月以降に検証を行う。年度内に報告書をまとめ、検討会に提出する予定だ。
■いかに地域住民の理解得るか
委員からは、実際に運用する際には、いかに地域住民に情報提供し、理解を得るかがカギだとする意見が出た。関政彦委員(東京消防庁参事・救急部救急管理課長)は、「(消防機関の)体制の強さ・弱さで、救急隊の到着が遅かったり速かったりすると、地域住民から理解を得るのは難しいのでは」と、ピーク時だけのトリアージ実施など、消防機関の都合による運用では住民に理解されにくいとの考えを示した。
谷川攻一委員(広島大大学院救命救急医学教授)は、「地域住民がどういうレベルの救急体制を求めるか。こちらがどれぐらいの救急体制を担保できるか。ここに一致がないといけないが、大きな課題だ。(トリアージ実施の際には)今までの救急体制と違うということを、提供側と受ける側で同じレベルの認識に達しておく必要がある。それがあれば、法的な問題も含め、ある程度の幅は許容されるのでは」と述べた。
更新:2008/07/28 20:55 キャリアブレイン
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