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取材ヘリ事故:信越放送記者ら死亡…31日に損賠訴訟判決

 長野県南木曽町で04年3月、信越放送の取材ヘリコプターが送電線に接触して墜落、4人が死亡した事故で、同放送記者、三好志奈さん(当時26歳)の両親が、国、中部電力、信越放送などに賠償を求めた訴訟の判決が31日、東京地裁(鶴岡稔彦裁判長)で言い渡される。両親は今月6日に起きた青森朝日放送の取材ヘリ事故にも胸を痛め「再発防止につながる判決を出してほしい」と願っている。【銭場裕司】

 ◇遺族「再発防止を」

 志奈さんは01年、「素晴らしい文化や魅力的な人々を地方から発信するドキュメンタリーを作りたい」との希望を胸に入局した。3人兄妹の末っ子。「甘ったれで何もできない」と案じていた母(由子よしこ)さん(64)は事故後、娘の成長していた姿を取材先から聞いて知った。

 休日返上で取材に没頭し、高齢者や障害者に光を当てた。取材先には便せん5枚もの礼状を送っていた。医師の活動を追って完成間近だったドキュメンタリーは、同僚が引き継ぎ、系列局内の大賞も受賞。それだけに父政寛さん(70)は「これからという時だったのに」と唇をかむ。

 裁判では、ヘリを運航した中日本航空だけが過失を認め、国と中部電力、信越放送は責任を否定している。

 事故は、機長が送電線に気付かず接触して起きた。国土交通省の航空・鉄道事故調査委員会は、衝突を防ぐために航空法が定めた「昼間障害標識」が送電線になかったことを事故原因の一つに挙げた。中部電力は「当時の規定の解釈では設置義務はない」と反論し、指導する側の国も「標識を設置させる義務はなかった」としている。

 青森朝日放送の取材ヘリ事故でも、同じ20代のアナウンサーが行方不明になった。地理など取材地の安全を確認しなかったとして信越放送の責任を追及している両親は「ご家族の気持ちを思うとつらい。若い人は『乗りたくない』と断れないでしょう」と胸を痛める。「事故後にきちんとした安全対策があれば、次の事故はなかったのでは。志奈の死を無駄にして欲しくない」。政寛さんは祈るように語る。

毎日新聞 2008年7月28日 15時00分(最終更新 7月28日 15時00分)

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