【社説】ARFであらわになった韓国外交の限界
今月24日に開催された東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム(ARF)で、議長国のシンガポールが「金剛山射殺事件の早期解決」と、北朝鮮が主張した「10・4宣言に基づく南北対話の支持」の両方を議長声明に含めようとしたが、南北双方からの抗議を受け、結果的にどちらも削除されるという結果となった。この知らせを聞いた韓国の国民は当惑と混乱を同時に感じたことだろう。
10・4宣言は基本的に北朝鮮への経済支援に関する問題であり、あくまで南北間における懸案にすぎない。しかし北朝鮮軍が金剛山で女性観光客に銃撃を加えて死亡させた事件は、あくまでアジアの安全保障という次元で取り扱うべき問題だ。実際に今回の外相会議では、韓国以外にも5カ国ほどが金剛山事件について言及していたが、一方の10・4宣言について取り上げたのは北朝鮮だけだった。だとすれば議長声明で金剛山事件に言及するのは正しい選択ともいえるし、韓国としてはそれが最善の結果だったはずだ。しかし、北朝鮮も手をこまねいて見ているわけではなかった。また議長国のシンガポールも、南北のどちらか一方に肩入れする考えはなかったようだ。
北朝鮮軍兵士が韓国の女性観光客に狙いを定めて銃撃を加え、死亡させた事件に対し、韓国政府が真相の解明と再発防止に向けてやるべきことはすべて行うというのは当然のことだ。北朝鮮がこれほどまで耳を貸そうとしない状況では、今回の外相会議のような国際会議の場で訴えるのも一つの方法だった。しかし議長声明から金剛山事件を削除させるのに成功したことで、今後は北朝鮮がより硬直した態度を取る可能性が出てきた。
今回の会議に北朝鮮が参加することは当初から予定されていたことだった。そのため韓国政府としては、議長声明に金剛山事件を入れるという目標を推進すると同時に、現地で北朝鮮の動向やそれに伴う状況を把握し、より機敏な対応を取るべきだったはずだ。実際に5カ国余りの国が北朝鮮に対して金剛山事件の解決を促した以上、あえて議長声明に入れなくとも北朝鮮を圧迫するという成果はすでに達成されていた状況にもあったのだ。
全体の国力や国際社会での評価で、北朝鮮は韓国とは比較にもならない国だ。それでも大韓民国の外交がこの程度の結果しか出せないというのは納得できない。現実的に限界があったのか、それとも外交担当者があまりにも無能だったのかについて徹底した反省が必要だ。現在の南北関係からすれば、北朝鮮との外交競争は今後も続く可能性がある。それを避ける方法は何であり、またそれが避けられないならばどのような対策を取るべきかについても、綿密に検討を行う必要がある。
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