平成20年6月6日午後1時 提訴 平成20年(ワ)15321号 東京地方裁判所民事第7部担当 受付年月日 平成20年6月6日 こんばんは、雷句誠です。 もうニュースなどを見て、知った方もいると思います。 上記の時間に(株)小学館に対し、紛失したカラー原稿、5枚の損害賠償を請求する訴訟を起こしました。 無くされたカラー原稿は下記記載の5点です。 この訴訟に関して、自分の言いたい事は 「陳述書」として、裁判所に提出。 この自分が書いた「陳述書」に この裁判にいたる理由が全て詰まっています。 小学館が提示した紛失したカラー原稿の賠償金の金額を見て、 今回のこの訴訟を踏み切りました。 私は以下に記載する「陳述書」にて、 編集者など、個人名を記載しています。 理由はこの文章の内容を明確にするため、(株)小学館の中にも真面目な良い社員はいます。その人たちを巻き込まない様にするためです。そして、裁判は「公開」が基本の世界です。 裁判所に提出したそのままの文を記載いたします。 なお、私も滅多な事ではこういう公の文章にて個人名を出して非難すると言う事はいたしません。きっと些細な事でそう何度も個人名を出して非難していては、友人さえいなくなってしまいます。 こういう公の文章で名前を出すという事はよっぽどの被害がでているか、名前を出さなければどうしようもない状況とお考えください。 この点に関しましてはご理解をお願いします。 そして、これから記載する「陳述書」。長いです・・・A4で12ページあります。 その後に小野智彦弁護士さん(この日記の横にリンクがあります。とても協力してくださいました。これからもよろしくお願いします。)が作ってくれた「訴状」もあります。こちらはA4で8ページ程になります。 もし、ご興味のある方は時間にゆとりを持ってお読みください。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 陳 述 書 1 この提訴に至るまで。 (1)「あまりにも編集者、出版社と言う物が漫画家を馬鹿にし始めた。」 これが訴訟へと動いた動機です。 (株)小学館、週刊少年サンデー編集部が私、雷句誠の漫画「金色のガッシュ!!」のカラー原稿を5枚紛失。そのカラー原稿に対する小学館側がだした賠償金の金額をみて、訴訟を決意しました。 賠償金の金額は原稿料の3倍でした。 私のカラー原稿の原稿料が1枚17,000円×3で51,000円。 そのうちの一枚はカット扱いとされ、1枚10,000円×3で30,000円。 51,000×4(枚)+30,000円=234,000円が賠償金。 その金額に何故か「補償金」と言うのが付き、その金額が266,000円 合計500,000円が小学館の出した、紛失したカラー原稿に対する金額です。 (2)単純計算で1枚10万円。白黒原稿ではなく、カラー原稿で10万円です。しかもこの計算式で怖いのは「賠償金」と、「補償金」に別れている事です。「補償金」って、何なんでしょう?辞書での直訳では補償=「損失などの埋め合わせ」である。普通、それも含めて賠償金と言うのではなかろうか? (3)賠償金だけなら原稿料の3倍、カラー原稿で、です。補足として書きますが、カラー原稿は普通の白黒原稿よりもとても時間がかかります。白黒原稿が1枚仕上げまでスタッフを使っても平均約3時間、カラー原稿は最低10時間はかかります。時間だけでも3倍はかかる。中にはカラーをあまり描き込まず、もっと速く上げる作家さんもいます。しかし、2倍以上の時間はかかってると思います。 だとすると、今回の「カラー原稿」の場合ではなく、「白黒原稿」の賠償金は1.5倍。もしかしたら1倍、即ち、もう一度原稿料と同額の金額を渡して事を済まそうとしているのです。 (4)そこで一番怖いのは編集者が漫画の原稿と言う物をぞんざいに扱い始め、「どうせ紛失したって、原稿料払い直せば事は済むんだろ?」と、思われ始める事です。 漫画の原稿と言うのは、漫画雑誌の編集者にとってももっと貴重に扱われていたはず。それがここまで酷い扱いになっては行けないのです。 もし私がこの金額で了承の判を押してしまったら、これより先、白黒原稿なら約1倍の金額で全ての賠償金が設定されてしまう。自分の白黒原稿は1ページ13,000円、そして、自分より先の漫画家には「補償金」と言う、意味の分からないお金が消え去り、いわゆる賠償金約1倍のお金、すなわち13,000円のみになる可能性は大きい、さらに自分より若い新人の漫画家は、 「雷句誠がこの金額で納得して、君が文句を言うのはおかしいだろ?」 と、何も言えなくしてしまう事も出来るのです。それだけは絶対に防がなくては行けません。 (5)「どうせ紛失したって、原稿料払い直せば事は済むんだろ?」 この台詞、「そんな事を言う編集はいない!」と、思う人もいるかも知れません。しかし、今のサンデー編集部ならば、あり得ない話でありません。そこまで、私達漫画家は仕事相手としての対等な付き合いをされていないのです。 2 少年サンデー編集部の実態 (1)本来、漫画家と、編集者(出版社)は、対等の付き合い、フィフティーフィフティーの関係でした。全没(始めから全てやり直し)が出たら、編集さんは深夜でも自宅のFAXで直しのネームを受け取り、すぐにチェックをし、原稿に取りかかれるようにする。そして直しを出すにしても、その先に漫画が面白くなるような展開を話し合う、漫画家を納得させて、漫画家も面白くするために努力する。もちろんお互いを仕事相手としても見ています。しかし、その関係はもうサンデー編集部にはありません。少なくとも、私、雷句誠においてはそんな関係はありません。 (2)私、雷句誠の漫画「金色のガッシュ!!」の最初の担当畭俊之氏はまだ、「仕事」をしていました。確かに厳しく、悪口も多く、ネームの全没もよくだしましたが、「仕事」はまだやっていました。 (3)2代目担当の村上正直氏も、最初は本当に非協力的でケンカ腰でしたが、私が一度怒りをぶつけてからは、しっかりと一緒にガッシュを作ってくれる人でした。 (4)3代目担当の袖崎友和氏からは、最初こそ良かったものの、そのうち遅刻が当たり前の状態、袖崎氏が決めた締め切りに必死になってカラー原稿を上げたら、その原稿は取りにこない。「なぜか?」を聞けば、「いつでもいいだろ」との返答、この人もまた仕事場で怒ってからやっと遅刻も直り、喧嘩を売る態度も消えました。 (5)4代目担当の高島雅氏にいたっては、担当替えの当日からニヤニヤした感じで私にガンをつけてきている。 「なぜ、替わる担当替わる担当、喧嘩を売ってくる必要があるのだ?」 そして高島雅氏から出た言葉は、「僕は編集部の中でも怖い編集といわれていてね。」「僕は冠茂と仲がよくってね。」 この冠茂氏と言う編集は後で詳しい事を書くが、あまり良い噂を聞かない編集者である。だから、なぜ、そんな事を初対面で言う必要があるのだ?!自分の担当は全て編集長から「雷句誠に喧嘩を売ってこい!」と命令されているのか? ちなみにこの高島雅氏から、自宅のFAX番号は教えてもらっていない。聞いたら、「自宅のFAXは壊れている。」半年か1年経っても「まだFAXは壊れている。」もうここまでくればわかる。「自宅に仕事を持ち込むな。」との意思が。 この担当編集とはいろいろあり、右手の骨を折って、連載を休載したのもこの時期である。 (6)その次の担当(5代目)、飯塚洋介氏にいたっては、誤植を注意したらガンを付けてくる担当編集である。ミスを注意して逆ギレされては、もうどう仕事してよいのかもわからなくなる。そのうち、電話も会話が終わると、自分にわかるように受話器を叩き付ける様に切る。 (7)自分はいちいち細かい事を言ってるかもしれない。しかし、遅刻もこの電話の切り方も社会人ならば普通にできなければならない礼儀である。仕事相手に対してする行為ではない。 時間もギリギリで、精神的ストレスも高い週刊連載で、なぜ漫画家はこうも仕事相手とは思えない対応を受けるのか? 時には漫画家があまりにも締め切りを守らなかったり、雑誌としての人気がないのに我を張り面白くない展開を続けたり、など、雑誌や関係者に迷惑をかけていたら怒っても良いと思う。しかし、何の理由もなく漫画家に対して喧嘩を売る態度など、全く必要ない。 3 金色のガッシュ!!の連載を止めるに至った経緯 (1)私は右手の骨を折った時、2005年12月13日に「ファウード編終了後、後1年で金色のガッシュ!!の連載を終わらせてください。その後週刊少年サンデー、及び(株)小学館のお仕事を全てお断りさせてください」とのお願いをFAXにて送りました。 (補足として書きますが、「ファウード編」とは、その当時に描いていた「金色のガッシュ!!」の漫画の一編です。) (2)右手の骨を折ったのは、精神的ストレスの結果でした。 当時、この高島雅氏は編集長に「金色のガッシュ!!」の引き延ばしを命じられていました。私との最初の打ち合わせで、引き延ばしのネタをたくさん出しましたので。しかし私の気持ちはもう「金色のガッシュ!!」は終わりを考えていて、それらしい事を編集にも伝えていました。 ですから、よっぽどの良いアイデアやお話展開でなければ「金色のガッシュ!!」を引き延ばすつもりはなかったのです。残念ながら高島雅氏の出してきたネタはあまり良くありませんでした。 引き延ばしは駄目でも、普通にガッシュのお話のネタはたくさん出してきました。が、残念ながら使えないそのネタは「アイデア」ではなく「思いつき」の段階で止まっている。アイデアとは、数ある「思いつき」を、その漫画のキャラ、お話にあて、面白くなるかどうかを頭の中で何度もシミュレーションする。 その中からほんのわずかだけがキャラを活かし、お話を面白くする「アイデア」となる。単なる「思いつき」を無理矢理押し込めばキャラも無茶苦茶になるし、お話も死んでしまう。 しかし、高島雅氏は強引に「思いつき」をゴリ押しし、後のお話に仕上げる展開、どんな矛盾やページ的無理があろうとやれと言う、そして大幅にオーバーしたページ数を出せば、「そんなの18ページに入るわけないだろ?!」と高島雅氏はキレ始める。 そんななか何とか話を面白くしようとするがやはり限界はある。自分であらかじめ考えてたお話を潰して、なぜ苦しんでまでつまらないお話を描かねばならないのかとストレスがたまる。 (3)その頃、同じミスが続き、机を思いっきり殴り、拳の骨が右手の皮膚を突き破りました。ミスをしたアシスタントにミスをした所をしっかり見ろと、顔を近づけさせたところ、そのアシスタントも勢い余って顔を机にぶつけ、ケガをする。 幸いケガは大した事がなく、後もわからないまでに直るが、過失とはいえ、傷害事件にできる事故である。腕を折った自分も包帯を右手に巻いたままアシスタントの子のお母さんへ電話をかけ、必死に謝る。よく許してくれたと思う。 この時に「もうサンデーでは駄目だ、小学館では仕事は無理だ。」と感じてのFAXです。 4 骨折後の小学館の対応 (1)当時担当編集の高島雅氏はその日のうちに了承のFAXを自分の家に送ってくれ、週刊少年サンデー編集長の林正人氏の翌週には私の仕事場まできて、了承をしてくれました。 その後で、とある先生の仕事場に行くと、編集部の間でこの事件は「雷句誠がアシスタントを殴って手の骨を折った」との噂になっていた。 自分はしっかりと林正人編集長と高島雅氏に事を話したのに、何故こうなっているのだ?!殴った傷かどうかは病院のカルテをみれば一目瞭然である。 (2)とにかくこの編集部を離れたかった。しかし「金色のガッシュ!!」は楽しみにしている読者がたくさんいる。私としても本当に大事な作品である。絶対に尻切れとんぼにしてはいけない作品である。そこで期限を決めての続筆です。 5 連載終了後 (1)やっとサンデー本誌の連載が終わったと思い、これまで預けたカラー原稿の返却を求めたら、「数枚、原稿を紛失してしまっています。」との返事。 行方がわからなくなったカラー原稿を探してもらう。何週間かで数枚カラー原稿がでてくるが、まだ8枚足りない。そんな時、担当の飯塚洋介氏が編集長と副編集長が話がしたいと言う。 内容を聞くと、紛失したカラー原稿の話もあるが、私が小学館を離れる事に付いても話があるらしい。飯塚洋介氏は言う。 「いるじゃないですか・・・一回もうサンデーでは描かないといって、また戻って描く人が。」 「・・・」自分はもう言葉がない。ただ返事をします。 「しっかりとお話をしたいと思いますので編集長と副編集長との予定を決めてください。」 後に林正人編集長、縄田正樹副編集長と、担当の飯塚洋介氏がくる。林正人編集長が言う。 「ファンも待ってるし、またサンデーで連載をお願いしたい。」 もちろんできる訳が無い。自分が腕を折った時、どういう思いであのFAXを出したか、どんな思いでガッシュを最後まで描いたか、なぜ編集長は今更こんな台詞が言えるのか?私は机を叩き、(また右手で叩いてしまう、)編集長に怒鳴ります。とにかく怒鳴りまくりました。 すると、横にいた縄田正樹副編集長が言います。 「これからも時々こちらに顔を出して話をしても良いですか?」 私は答えます。 「家にきて、何の話をするのですか?」 縄田正樹副編集長はやはり飯塚洋介氏と同じことを言う。 「いるじゃないですか?もう描かないと言って、また戻って描く人が・・・」 (2)最後まで担当編集者が自分に対して喧嘩を売る態度を取っていたのはこの言葉があるからである。漫画家にいくら編集者がふざけた態度を取ろうが、喧嘩を売ろうが、どうせまた漫画家は小学館で描かせてくれと言うだろう。 だから、私が右手を折った時、漫画自体が描けれなくなるような思いをして「小学館でのお仕事をお断りさせてください」と言おうと、この編集部は「どうせこいつもまた口だけだ」と笑っていたのである。 6 原稿紛失についての小学館との話し合い 私は、「もう(ガッシュの仕事が終わったら)来ないでください。」と、縄田正樹副編集長に答え、その上で、当時既に小野智彦弁護士と相談をした内容、なくしたカラー原稿の捜索期間をもうけた事、それまでにカラー原稿がでてこなければ小学館側で紛失したものと断定。賠償金の請求、もしその金額が納得のいかないものであれば、損害賠償訴訟を起こしますとのお話を出し、こちらの意思を伝えました。 この話を出したときも縄田正樹副編集長は言います。 「8枚でいんですね?」 なくした原稿のお詫びよりも、若造の漫画家がたてついた事にいらだつ感じの声でいい、その場を立ちました。 その後、設けた捜索期間内に3枚カラー原稿がでてきて、紛失したカラー原稿は計5枚となり、小学館側が賠償金を提示してきました。その金額がこの文の頭で書いた金額です。 7 小学館に対して思うこと (1)本当ならば、もうガッシュを描き終えた時点で何もせずサンデーを、小学館を去るつもりでいました。とにかくもう関わり合いたくなかったのです。担当編集者から電話がかかってくるだけでイライラしてくる気持ちがわかるでしょうか? ですが、最後の最後でこの原稿紛失、その賠償金の金額の中身、その金額が指し示すこれからの編集者の行動を想像し・・・今回のこの訴訟へとなりました。 いつから漫画雑誌に取っての漫画家はここまで馬鹿にされる様になったのか?高島雅氏の話の時にでた冠茂氏という編集者は私のアシスタントをしてくれていた酒井ようへい先生の担当編集で、冠茂氏の言う通り描かされ、酒井先生が、自分の描きたくないストーリー展開に抵抗すれば、「死ね!3流漫画家!」と、作画中に電話で罵倒され、後半はそれに対する酒井先生の抵抗もつらくなり、冠茂氏の言うまま描くも、お話を無茶苦茶にされ、人気も上がらず、最後引っ掻き回したお話を収集しないまま、別の編集者へ担当を変え、責任も取らず冠茂は逃げる。酒井先生はその引っ掻き回したお話を収めるだけで初の週刊連載を終わる事に・・・ このお話は当時の酒井先生が何度か自分の所へと相談に来ていたので、覚えている話です。本当に「道具」扱いである。 (2)つい最近週刊少年サンデーが創刊50周年を迎え、その記念として、今までの大御所の先生方にサンデーでの思い出を漫画で描いてもらうと言う企画がありました。その中で小山ゆう先生という大御所の作家さんが、2008年16号の週刊少年サンデー掲載の漫画の中で、ひたすら小山先生に失礼をしている編集者の漫画を描いていました。最後は想像オチ(こんな編集、いるわけないよ)みたいな感じで現実ではないと描いてましたが、こんな50周年というおめでたい企画で、はたして小山ゆう先生が何の原因もなく、こんな嫌みになる漫画を描くであろうか? 私はそれまで小山ゆう先生の描かれた、漫画の中の編集さんの態度に似た行為をとても多く見てきました。 きっと、小山ゆう先生ほどの大御所の人にもひどい対応をしてるのではと想像できます。 8 少年サンデーのみならず、(株)小学館そのものと今後仕事をしない理由 自分が仕事をお断りするのが週刊少年サンデーだけではなく、(株)小学館にした理由は、一つは(株)小学館は「移動」の多い会社である事。編集者がよく部署を移動し、いくら雑誌が変わろうと、上記に上げた編集者がまた自分の目の前にでてくる可能性は高い。 2つ目はサンデーだけではなく、どの雑誌でも仕事のできない、いや、仕事を「しない」編集者がいる事、これは自分の漫画家さん仲間からとても嫌な話がたくさんでている。 3つ目は経理にて酷い目にあった事。私は一時期、個人事業を有限会社にし、会社としての経理、原稿料や印税などの支払い計算をお願いしました。しかし、担当編集を通して伝えたにもかかわらず、個人事業としての支払いを続け、確定申告後に税務署から230万円の課税支払いを命じられました。もちろんこの金額は小学館側に支払わせました。 ですがその後も、こんな事件があった後も会社形式の支払いに直さず、数ヶ月後に怒り、やっと会社形式に直してくれると言うものです。経理でも怒鳴らなければまともに仕事をしてくれない。おかしいと思いませんか? 9 漫画家が望む編集者との関係について もう、これ以上漫画家は編集者に馬鹿にされてはいけない。まともに仕事相手としてみなければいけない。 漫画雑誌では当たり前だが、漫画家がいなければ造れない雑誌である。普段漫画家を見下して馬鹿にしている編集者も、絵は描けなくても漫画原作者として一人立ちし、漫画雑誌を支えろ!と言われたら、誰一人として漫画原作者になる人はいないだろう。大ヒットを飛ばせれる自信はないだろう。それだけ漫画というものは難しいものと編集者はわかっているはずなのだ。それなのに何故、ここまで仕事相手としての対応をしないのか? 今、小学館の漫画編集者で、担当している漫画の資料(写真や文献)を自らの足を使って集め、漫画家に協力している編集者はどれだけいるだろう?寝ないで自分の担当する漫画のアイデアを考える編集者はどれくらいいるだろう? 最初の担当の畭俊之氏は、一番働き、アイデアも出したが、担当期間の中盤からは、自らネタを出す事はしていない。あくまで自分の出すネタ、アイデアの選別と、それに関するアドバイスのみ。写真などの作画資料も村上正直氏が本当に担当が変わる最後に、本を1冊探してくれたのみ。引き延ばしを命じられた高島雅氏も「ネタは晩酌しながら出してる。」である。 しかし、これでも上記の編集者は「働いている方」だと小学館内部の方に聞いた。畭俊之氏は言う 「漫画編集なんて楽だよ、漫画なんて漫画家に描かせればいんだから。」 畭俊之氏はそれでもしっかりガッシュのために働いていた。全没をだしても深夜のネーム直しのFAXに応じた。 だが、働かない編集者がこの言葉を平気で使う様になっては、もう終わりだ。何もしないで威張っている編集者が、作品の意味も、キャラの性格もわからずに作品の直しを出し続ければ、作品はつぶれ、漫画家は壊れる。 きっと漫画家のほとんどはほぼ24時間、自分の作品に付いて考え、悩んでいる。それに対して編集者は一体どれだけの時間、担当している漫画に時間を費やしてるだろう? 10 本訴提起に際して思うこと (1)私は今回、こういう風に無くされた漫画原稿に対し、損害賠償訴訟を起こした。しかし、原稿を無くされて泣き寝入りをしている新人漫画家はきっといる。噂だが、同じ小学館で、そういう悔しい思いをした漫画家がいたという事実が耳に入ってきている。 きっとその漫画家さんが泣き寝入りした気持ちも、きっと 「もうこんな編集者とは関わり合いたくない。」だろう。 (2)本来なら、こんな漫画の裏側など公の場に出すものではない。漫画家は読者に対してエンターテイメントだけ発信していれば良い。そう思っていました。 私の漫画家の先輩である。椎名高志先生が時折自身のブログにて担当編集者が担当している椎名先生の漫画を読んでいない事実や、訳の分からぬ担当編集者のネーム直しなどを書き、編集の不備を世間に出しています。 私は実はこの行為はやるべきではないと思っていた。ぐっと耐えて、面白い漫画さえ出していれば良いと思った。 だが、今のサンデー編集部では、これが必要なのだ!名前を出して、名指しで注意をしないと、編集長も怒らない、ミスという事実すら周りもわからない。怒った所で「どうせ怒っても、手は出せないんだろ?」と、なめてかかる。飯塚洋介氏のように、ミスを注意した所で逆にガンを付けてくるのが実情なのである。 11 まとめ(私の絵の美術的な財産的価値について) (1)長くなりました。しかし、編集者が漫画家を馬鹿にし始めた感じは伝わると思います。原稿を紛失した所で「どうせ紛失したって、原稿料払い直せば事は済むんだろ?」と、言い出しそうな状態は伝わると思います。 (2)自分が損害賠償にて提示した金額について説明します。 カラー原稿1ページに対して30万円(補償金という訳のわからない金額はなくしてあります)。自分のカラー原稿料の約17倍です。 本来ならば白黒原稿は原稿料の10倍、カラー原稿ならば原稿料の30倍は提示したい所でした。しかし、私にカラー原稿の規準価値がなかったため、ヤフーオークションにてでた私の「金色のガッシュ!!」のカラー原稿の金額が平均25万、失った原稿は実際に雑誌本文で使用されたものと、オークション自体、ほとんど宣伝せず、あまり読者に知られてない中での開催という事で、5万上乗せし、30万円としました。 この金額に対して(株)小学館はどんな答えを出すかはわかりません。低い金額で押し通すならばそれでも良いでしょう。それが今の小学館の姿です。 以 上 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 収 入 訴 状 印 紙 (3万円) 平成20年6月6日 東京地方裁判所民事部 御中 原告訴訟代理人弁護士 小 野 智 彦 (本来ならばここに自分の住所が入るのですが、このブログでははぶいております。) 原 告 河 田 誠 〒170−0002 東京都豊島区巣鴨2−11−4 第3高橋ビル3階 豊島法律事務所(送達場所) 上記訴訟代理人弁護士 小 野 智 彦 電 話 03−3915−5523 FAX 03−3915−5175 〒101−8001 東京都千代田区一ツ橋2−3−1 被 告 株式会社 小学館 上記代表者代表取締役 相 賀 昌 宏 損害賠償請求事件 訴訟物の価格 490万円 貼用印紙額 3万円 第1 請求の趣旨 1 被告は、原告に対し、金330万円及びこれに対する訴状送達日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は、原告に対し、別紙絵画目録記載の絵画のポジフィルムを引き渡せ。 3 訴訟費用は被告らの負担とする。 4 第1項につき仮執行宣言 第2 請求の原因 1 当事者 (1)原告は、ペンネームを「雷句誠」とする漫画家であり、「金色のガッシュ!!」の著作者であって、その原稿(以下「原画」を意味する)の所有者である。 2001年1月より、被告が出版する「週刊少年サンデー」誌上で、「金色のガッシュ!!」の連載を開始し、2007年12月まで好評の下に続いた。同作品は、2003年より「金色のガッシュベル!!」としてテレビアニメ化され(フジテレビ)、2006年まで続いた。第48回(2002年度)小学館漫画賞受賞(甲1)。 (2)被告は、雑誌・図書出版、通信販売等を業とする株式会社である。 2 原稿連載契約及び出版契約の締結(甲2) (1)原告は、被告との間で、平成12年秋頃、被告が出版する「少年サンデー」において、自らの作品(金色のガッシュ!!)の連載をする契約をした(口約束)。その際、原告は、被告より準備金として30万円を受領した。 契約当初の原告の原稿料は、白黒原稿が1ページ1万円(後に小学館漫画賞受賞により1万3000円にアップした)、カラー原稿が1ページ1万4000円(その後1万7000円にアップした)であった(いずれも口約束)。原告が被告に入稿した原稿は、いずれも貸与であって、その所有権は原告のものである。 (2)その後、「金色のガッシュ!!」の評判が頗るよかったため、2001年5月27日、被告は原告に対し、少年サンデーコミックスとして出版することを申し込み、原告はこれを承諾した。 そのため、被告に貸与した原稿は、白黒原稿についてはコミックス出版後半年程経過したころに各々すべて返還されたが、カラー原稿については、少年サンデー誌の巻頭ページに再使用されたり、広告媒体などに再使用されることがあったため、連載終了に至るまで、被告が保管することとなった(原稿についての寄託契約)。 3 被告の債務不履行(原画の紛失)による損害(原画の美術的価値) (1)平成19年12月26日、連載終了に伴い、原告は、被告(担当:飯塚洋介氏)より、被告が保管中のカラー原稿を合計201枚、モノクロ原稿を43枚、写真2枚、ポジ2点、ネームノート2冊の返還を受けたものの、以下の原稿が不足していた(甲3)。 @ 本文カラー コミックス1巻の6P,7P(2枚)(甲4) コミックス9巻の115P(1枚)(甲5) コミックス15巻の59P(1枚)(甲6) A コミックスカバーイラスト 11巻折り返しのカラーイラスト(1枚)(甲7) B 2002年、26号サンデー表紙用カラーイラスト(集合表紙) C アニメ化記念、景品用図書カードイラスト、ガッシュ、ティオ、キャンチョメ、ブラゴ、の計4点。 (2)平成20年2月29日、被告より、紛失原稿についての連絡があり、B及びCのカラー原稿が見つかったとの連絡が入った。従って、被告が扮失した原画は、上記@及びAの計5枚の原画ということになる。(甲8の1,2) (3)被告の善管注意義務違反 被告は、善良なる管理者としての注意義務を持って本件原稿を保管していなかったため、紛失するに至った。 (4)損害額について @ 「金色のガッシュ!!」について(甲9) 本件原稿は、被告出版による、週刊少年サンデー2001年6号から2008年新年4・5合併号まで連載されていた作品で、単行本(コミックス)は、提訴日現在において32巻まで発刊されている(33巻が平成20年6月18日に発刊予定)。 同作品は、「金色のガッシュベル!!」の名で、東映アニメーション制作でテレビアニメ化され、フジテレビにおいて2003年4月6日から2006年3月26日まで、全150話が放送された。アメリカにおいても「Zatch Bell !」として放送された。 さらには、2004年8月および2005年8月にそれぞれ映画として公開されている。 その他、ゲームボーイアドバンス、PS2等でコンピュータゲーム化された他、トレーディングカードゲームについては、番組が3年間続く原動力となるほどの高い人気を誇っていた。 作品の内容としては、「友情、努力、勝利」という少年マンガの王道を行く熱い作品であり、現在においても絶大な人気を誇っている。 A オークションでの落札価格について マンガの美術的価値としての損害の填補としては、前例がないことから、今回、紛失した原稿と同様のカラー原稿を、ヤフーオークションで売りに出すことで、自らの原稿の客観的な価値を探った。 2作品をオークションにかけてみたところ、1つは35万4000円で落札(甲10)、もう一つは16万4000円で落札された(甲11)。 B 原告の描いた原画の美術的価値の算定 上記オークションでの売買価格の平均値が25万9000円であること、紛失された原稿は実際に雑誌本文で使用されたものでありプレミアがついていること、オークションの開催自体が読者に余り知られていない中で行われたこと等を考え合わせ、一応原稿1枚につき、30万円と算定した。 従って、紛失された原画原稿が5枚あることから、総額150万円の美術的価値が侵害されたものといえる。 (5)ポジフィルム返還の合意 平成20年2月29日、被告は、原告に対し、紛失した未返却原稿について、紛失原画に相当するポジフィルムの返還を約束した(甲8の1)。ポジフィルムがなければ、同一のマンガを出版することができないことは言うまでもない。 4 慰謝料(不法行為) (1)被告が原告から預かった原稿を、紛失するということは、あまりにも杜撰な管理体制であったというべきである。 (2)このような被告の注意義務違反(過失)によって、原告の所有する美術的価値のある原画5枚が滅失したのであって、明らかに被告による所有権(財産権)侵害である。 (3)財産的損害としては、先に述べた3(4)Bがここでも当てはまる(請求権競合)。 (4)精神的損害としては、原告が魂を込めて仕上げた原画(特にカラー原稿)であり、かつ、非常な愛着を持っていたのであって、このような作品を被告の全くの不注意によって滅失させられた原告の精神的な損害は著しく、これを金銭的に評価すれば、1枚あたり30万円、合計150万円を下るものではない。 5 弁護士費用 30万円 6 本訴の意義 (1)「1970年代までは、漫画原稿そのものに価値はな」く、「漫画は印刷されて初めて『完成品』という見方がある。生原稿は印刷するための素材に過ぎず、用が済めば捨てられてしまうことも珍しくなかった」(2003年8月22日讀賣新聞夕刊・マンガ評論家・米沢嘉博氏のコメントより引用)。 しかしながら、現在は1980年に操業された「まんだらけ」が漫画に財産的価値を見いだし、原画の市場をつくることにより、マンガの原稿を「美術品」とみる傾向が現れた。最近では、漫画を展示したり所蔵したりする美術館も増え、例えば、1994年に、東京都現代美術館は、アメリカン・コミックに似せたポップアートを描くリキテンシュタインと言う画家の作品(ヘアリボンの少女・甲12)に6億円を投じたように、漫画の美術品としての扱いは益々一般化している。 しかしながら、法的な側面でみた場合、未だ漫画の原稿を「著作物」として扱われることはあっても、「美術品」として扱った前例がない。漫画の原稿の紛失については、数々の事例があるが、いずれも「美術品」としての損害賠償請求がなされたことがない。 その意味で、数ある原稿紛失に対抗する手段として、漫画原稿が「美術品」としての位置づけを勝ち取り、漫画が美術品、つまり芸術品としての社会的地位を獲得するとともに、編集者に対して「美術品」を扱っているという自覚を持たせるべく、今後同じような過ちを犯して欲しくないという思いから提訴するものである。 (2)また、本訴は、漫画家が、編集者、出版社から、あまりにも対等でない扱いを受け続けていることに対して、一種の警鐘を鳴らすものである。 漫画家の報酬は、全て後払いである。つまり、自腹を切って、アシスタントを雇い、仕事場を確保し、締め切りに追われて原稿を仕上げ、作品が雑誌に掲載された後に初めて報酬をもらうという、極めて不安定な状態である。例えば、連載の仕事をしたとしても、報酬が全て後払いであるため、出版社、編集者からすれば、無理難題を押しつけても、それに従わないとアシスタントたちに払う給料を確保できない漫画家の足元を見て、いじめが横行するのである。この構図は、漫画家が売れたとしても余り変わるものではなく、一般的に両者の間には圧倒的な力の差が存在しているのである。 本件原稿の紛失に際し、被告が提示した賠償額は、1枚に付き、原稿料の3倍という、原告の漫画家としての仕事を嘲るがごとき金額であった。被告に対して多大な貢献をした原告であってもである。これが、原告ほど売れていない漫画家であったならば、なにをか言わんである。 漫画界の世界で成功を収めた原告の、後に続く新人の漫画家たちへの最低限の責任として、「雷句誠がこの金額で納得して、君が文句を言うのはおかしいだろう?」と何も言えなくしてしまう状況をつくってしまうことは絶対に避けなければならず、本訴はその意味では、後輩たちへの原告の使命でもあるのである(甲13)。 7 よって、請求の趣旨記載の裁判を求める。 証拠方法 1 甲1 フリー百科事典「ウィキペディア」より 2 甲2 出版契約書 3 甲3 確認書 4 甲4 原画コピー(コミックス1巻の6P、7P) 5 甲5 原画コピー(コミックス9巻115P) 6 甲6 原画コピー(コミックス15巻59P) 7 甲7 原画コピー(11巻折り返しカラーイラスト) 8 甲8の1 被告からのファックス(「いつもお世話になっております。」で始まる文書) 9 甲8の2 被告からのファックス(「この度は未返却原稿の件」で始まる文書) 10 甲9 フリー百科事典「ウィキペディア」より 11 甲10 ヤフーオークション 35万4000円で落札された際の文書 12 甲11 ヤフーオークション 16万4000円で落札された際の文書 13 甲12 ヘアリボンの少女(リキテンシュタイン) 14 甲13 陳述書 附属書類 1 資格証明書 1通 2 甲1ないし13号証(写し) 各1通 3 訴訟委任状 1通 |
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