ファイアーエムブレム聖魔の光石のゼトxエイリークの二次小説を書いてます。総もくじからおはいりください。
しろがねも くがねもたまも なにせむに
2007-02-07 Wed 22:23
 修道院の薬草園で楽しそうに薬を作りながら、空色の王女は振り返る。「今日はアスレイたちが、ここに遊びに来てくれるのですって。楽しみです」
 姫君の麗しい姿をスケッチしていたフォルデは、紙から顔をあげて、にこりとする。「ルーテは本当に研究好きですね。解説目録を作るかたわら、魔道の研究もして、日に一度、絵の解説をしながら美術館を案内して回ってる。あの特別講義が、おもしろいと評判ですよ。テーマが日替わりなので、みんな、熱心に何度も通ってくる。昨日は風景画めぐりをしながら、グラドの歴史や気候について解説して、おれが参加した日には、ロストンの教会と宗教画と、なんだっけ、ああ、ロストンの祭りについて、教えてもらったんでした」
「博識だな、”天才”賢者どのは」今日は同行していたゼトが微笑する。「それにしても、いまは美術館だけだが、博物館が完成すると、ますます多忙になるだろう。大丈夫なのか?」
「いま、弟子が10人くらい、美術館で勉強してます」フォルデが答えた。「ルーテのかわりに、客に講義できる学芸員を育ててるんですよ」
 エイリークが手をたたく。「まあ。では、あの美術館は学校のようになりますのね」姫は心から嬉しそうだった。「こうして少しずつ、学者が増えていけば、国が豊かになることでしょう」
 フォルデがまた、にこりとした。「エイリーク様のおかげで、読み書きできる者も増えましたしね」
 王女は、文字を学びたい者に読み書きを教えてあげてほしい、と修道院長に頼んでいたのだった。院長をはじめ修道士たちは、子供たちが修道院に出入りすることを喜び、読み書きばかりではなく、数学や薬草の知識もおしみなく教えて、王都民に感謝されていた。
 王女はうなずいたが、うかない顔をしていた。「でも、王都民ばかりが教育を受けることができるのは不公平です。それぞれの地方の領主にも協力を求めてはいますが、なかなか・・・・せめて、読み書きくらいは全国民ができるようにしてあげたいのですけれど」
 将軍が優しいまなざしを向ける。「あなたは本当によい君主ですね・・・・あなたの望みは正当なものだ。我々で何か知恵をしぼりましょう」
 天使の笑顔で夫を振り返った姫君は、その肩越しに、近づいてくるふたつの人影に気づいて、サファイヤの瞳を輝かせた。「アスレイ! ルーテ! いらっしゃい。お菓子を用意していま・・・・あっ! 赤ちゃん!」
 道具を放り出して、駆けていくエイリークのうしろ姿を、ゼトもフォルデも苦笑して見送る。「うーん、本当に子供好きですね、エイリーク様は」
「ああ」ゼトがどこか寂しそうにうなずいたので、画家は、そうか、将軍もお子がほしいんだな、と、それ以上は触れないことにする。
 一方、エイリークはアスレイの腕から赤子を抱きとり、夢中で頬ずりしていた。「まあ、かわいい。なんていい子」
 ルーテが冷静に言った。「最近、わたしは美術館の仕事がいそがしくて、なかなか息子の観察ができませんが、放置しておいても、順調に生育しているのでひと安心です。さすがは優秀なわたしの息子です」
 アスレイがため息をつく。「放置って・・・・一日中、私が子守りをしているのですが」
 ルーテは容赦ない答えを返す。「仕事を始める前は、優秀なわたしが一日中、観察していました。いまは夜に、凡夫(ぼんぷ)のあなたから観察結果の報告を受けるだけです。これを放置と言わずに、なんと言いますか」
「まあ、悪いことをしました」エイリークがサファイヤの瞳をくもらせる。「わたしでさえ、かわいくて、ひとときも離れていたくないくらいですのに」そう言って、やわらかい頬に自分の頬をつける。「ルーテはお母さんですもの、いつも一緒にいたいですね・・・・ごめんなさい、忙しい仕事を押しつけてしまって・・・・」
「いいえ」ルーテはかぶりを振った。「いままでは息子の観察に明け暮れていましたが、久しぶりに研究の喜びを楽しませてもらっています。前々から、あなたにお礼を言いたくてたまりませんでした。わたしはたいへん優秀ですが、非常に謙虚(けんきょ)ですから」
「まあ・・・・うふふ。早く、美術館のお弟子さんが育つといいですね、ルーテが赤ちゃんと遊ぶ時間が増えますように」
 ゼトの隣に立っているアスレイが、おっとりと言う。「エイリーク様は、いいお母さんになりそうですね」
 ゼトは微笑した。「ルーテも、よい母親のようだ」
 司祭はほのぼのと笑った。「放っておいたら、一日中、子供にはりついていますよ。私のことなど、ほったらかしで・・・・まあ、もともと、ルーテさんは研究に夢中で、同居している私の存在を半分忘れているような人でしたから、無視されるのは慣れていますが」司祭は意外にというか、やはりというか、苦労人であった。「母親になると、女性はやはり、子供がいちばんになるのでしょうね・・・・まあ、もともと私はルーテさんにとって、標本室のカエル以下の存在でしたから、無視されるのは慣れていますが」司祭は修道生活よりも、むしろ結婚生活において、悟りを開いたようであった。
 将軍は曖昧に笑って、アスレイの話に相づちを打ちながら、赤子と遊ぶ愛妻の姿を、なんとも言えない気持ちで見つめていた。
 やはり、そういうものなのだろうか。母親になると、もう、恋人ではいられなくなるのか。
 子は欲しい。それは本心だ。しかし・・・・
「ゼト? ゼトったら!」
 突然、呼びかけられて、はっとした。目の前に、愛妻の不思議そうな顔があるので、もう一度、狼狽する。自分らしくもない。ぼんやりなどして。「あ・・・・いや、考え事をしていました」
 エイリークはにっこりする。「フォルデが、あちらの木の下にお茶の用意をしてくれました。早く行きましょう、ゼト」見回すと、アスレイ夫妻もフォルデもいない。作業所の向こうにある果樹園に行ってしまったらしい。
 ついていこうとして、不意にゼトは、自分でも思いがけない行動に出ていた。
「・・・・っ!?」
 前を歩く王女を背中から抱きしめ、甘い香りの髪に顔を埋める。ああ、やっと、やっと、こうして想いがかなったのに。放したくない。放したくない。いつまでも。ずっとずっと、ふたりきりでいたい。
 気づけば、訊くつもりもなかった質問が、口をついて出ていた。「・・・・早く子がほしいですか・・・・?」
 エイリークはすなおに、無邪気に答える。「はい! ほしいです!」
「もう少し・・・・」ゼトはかすれた声を出した。「・・・・このままでいたい・・・・」
 腕の中で、くるりと向きをかえた王女が、嬉しそうに抱きついてくる。「うふふ、いいですよ、でも、フォルデがむかえに来る前に放してください」
 ゼトは目を閉じた。「・・・・申し訳ない・・・・」
 姫君がくすくす笑う。「どうしてあやまるの、ゼト」
「私はわがままだ・・・・もう少しだけ・・・・あなたと・・・・このまま・・・・」
 エイリークの腕に、きゅっと力がこもる。「ゼトって、ときどき」
「・・・・なんです?」
 ゼトの耳を、芳しい息がそっとこすった。「赤ちゃんよりも、かわいい」


ちびエイリークらぶらぶちびゼト拍手
あとがき

アスレイさんは苦労人(ほんとかよ)。ファンのかた、すまんです。
よし、あと2話! あとふたつで、ひと区切りだ〜! 

拍手、コメントどうもありがとうございました〜。わたしにしては、かなり荒唐無稽な話だったのに、反響が意外と大きくて驚いた。

>リクエストしたお話が見れて幸せです♪妄想は、弟子とミルラさんの前で今回の将軍のように代読する賢者様、だったのですが…、これは予測してなかったです。

なるほど。それだとほのぼの話ですが、わたしはギャグに逃げてしまいました〜(笑)。一応、ご満足いただけて、よかったです。

>ご愁傷様です、陛下…。それからまたも「サ・レ・フ」で夫婦喧嘩の勃発ですか(笑)将軍はもうヒー様に対しては余裕がでてきたのに…トラウマ?なんにせよ姫様、大きな子供があらわれますよ!

しかし、この大きな子供は、かなりオトナなあやしかたをしないといけないので、扱いはやっかいですね〜(笑)。

>将軍の「サ・レ・フ!」に爆笑です〜!彼の名前がまた出して、将軍をヤキモキさせて欲しいな〜と思っていたところでしたvv 脳内で勝手に「ドレス2」が始まってます〜(^^;

おそらくゼトが”書類整理”をするために姫をずるずるひきずっていった先は、寝室に違いない(笑)。

>ゼトがサレフにやきもちを焼くのが好きです。エイリークとサレフってありえそうだからゼトが心配するのも納得です。ゼトとサレフのやり取りとか見てみたいです。賢者様に将軍をからかってもらいたいです。一番のとばっちりはその後お姫様にいくのでしょうが。

直接対決ですか・・・・うわ〜、どうなるんだろ(笑)。賢者様は姫に気があるんですかね。ゼトが勝手に妬いてるだけなのか、わたしにもまだわかっていない・・・・。姫は、そのとばっちりを、たぶん喜んでます(笑)。

>ラーチェルのやきもちは可愛いけど、ゼトのはちょっと恐い(^^;)。

あのあと、おそらく姫は体力の限界で、しばらく寝込むのでは・・・・(笑)。

>……ッ!!(大爆笑)将軍が、将軍がおごそかに「だ〜い好きなエフラムお兄ちゃんへ」って(笑)!今までで一番笑ったかもしれません。お腹痛ーい。

wiiのCMの人のようにですね。淡々とこの台詞を読み上げられると、なかなか、くるものがありますね(笑)。

>将軍!ミルラの手紙を読むところを想像してブハッときました!

よし! キャスティング成功! 実は、最初はフォルデに朗読させるつもりでした。

>サレフは絶対、わざとやってますよね。「お兄ちゃん」のところで噴き出しそうになりました。さりげなくヤキモチ焼いてる将軍に萌え〜です。

ということは、サレフもゼトに焼きもちを妬いてるのか? これは壮大な、賢者のいやがらせなのか・・・・? あり得る(笑)。

>うひゃひゃ(笑)手紙を読まされるゼトを想像して笑い死にそうです!サレフったら・・・狙ってやったんじゃないの?(笑)姫様のトンチキ発言(たまごから生まれる云々)も可愛かったですー。そしてさすがルーテ、マクムートの赤ん坊相手でも物怖じしないのは、一児の母の貫禄ですね(笑)

笑い死に! サレフ、やっぱりゼトにいやがらせをしてるのね。そして、姫はぽよよんです。こんな状態でご懐妊させて、大丈夫なんでしょうか。ルネス王家の性教育って、ぶつぶつ。

>ラーチェル様には是非ロリコンに厳しくして戴きたいです。目下の被告人は2人・・・

あれっ。ゼトもですか? ゼトもろりこ・・・・そうか。そうだったな、そういえば。

>画家と姫と騎士の関係がすき。ミルラ、うれしそうですね。でも、サレフの代筆でそんな事、書くかな?エフラム、どうやって聖王女の機嫌を取るのかな?

画家がいちばんオトナですよね〜。彼は我ながらキャラ作りに成功したと思いました。サレフはまじめに竜人様のおおせにしたがったか、わざとです(笑)。エフラムはとにかく謝り倒したに違いない。

>おんぶひものアスレイ(笑)拍手レスで爆笑しました。彼の弁護をすると、“あの”ルーテさんを優しく包み込める、包容力のある男なんですよ!だから将軍も「勇者」って…くくく(笑)もう限界。姫騎士様、ギャグも冴えてますね!ミルラの手紙には声出して笑いました…。

もはやアスレイさんは悟りを開いて、聖人になってしまっています(笑)。勇者で聖人なら、無敵だなあ。

>不良国王大好きです。ナターシャ殿口説いたバージョンをぜひ将軍の耳に聞き入れてもらいたいです。それを隠すために姫の影でこそこそ走り回るなさけな〜い将軍が見たいです。将軍とヨシュアのやり取りが今から楽しみです。ヨシュアとナターシャの関係も気になります。

な、なさけない将軍ですか・・・・それは、かわいそうかも〜。こそこそって(笑)。てゆ〜か、あのとんでもサーガをルネスに逆輸入するのか・・・・うわ〜、どうなるんだ〜。

>3騎士、笑えます・・・
>ゼトの悲痛な叫び。姫に届いてよかった。
>蛍探し、幸せな時間ですね
>ヒーニアスが求婚しなくて、そして素敵な人でよかった
>鈴をどこにつけたのでしょう
>心も体もつながりあう素敵な夫婦になれましたね

おお〜、なんかだんだん地層の上の方になってきたのがわかるコメント(笑)。どうもありがとうございます〜。鈴はスカート裏の、お好みの萌えポイントにどうぞ(笑)。

>花の宮殿〜 で涙腺決壊したのですよ!なんと良いお話だ……みんな暖かすぎるっ!!(つд;)ぐすん。ちなみに三騎士ネタはまたも最後まで読まないとわからなかった(笑)途中ホントに浮気かと(笑)自主トレしてきますorz。そしてイチゴの将軍はエロすぎると思いました(笑)

ん〜、やっぱりそうか。微エロサービスのつもりだったのですが、あとで読み返したら、どんエロになっていると、わたしも思ったのでした〜(笑)。マジ泣きしてくださったのなら、やはりあれを最終話にもってくるべきであった・・・・

近況報告 その1 wii

3時間近くかけて、組み立て、設定、ダウンロード完了。FEの「聖戦」「紋章」のデータを買いました。GBAで「聖魔」「烈火」「封印」は持ってるし。あとは「蒼炎」だけ!
・・・・いちばん必要なヤツじゃねーかよ。

近況報告 その2 恋愛ゲームの山崩し 「ときめきメモリアルGS」

>かまいたちのCDドラマに緑川氏が出てました。透役。
>ネス帰ってきておめでとうございます!場合によっては帰ってこないですからねぇ……

かまいたちにCDドラマがあるんですか! なんでもあるんだなあ(感心)。
ネス帰ってこないエンドがあるんですか! そいつは切なすぎるねぇ・・・・

さて、緑川氏が主役級で出ているということでわくわくしながら始めたGS。「硝子の森」の超貧相スチルのあとは、神々しいほどの超美麗スチルで、くらくらしました。キャラも美形ばかりだし、名前は呼んでくれるし、なかなか楽しい。
ただ、一応最後までプレイして、う〜ん、もう一周は辛いなあと思いました。なんたって、高校生活3年間、部活したり、バイトしたり、勉強したりと、単調なパラメーターあげが続くのですよ。せめて1年間ならあれだけど、3年間は長過ぎる〜。
そして、難易度、かなり高いです。パラメーターの調整もあるのですが、ほかの男の子たちに嫌われないために、しょっちゅうきげんをとってやらないといけないのが、うざい。なんで本命以外の男のきげんまでとらなきゃならんのだ。ここが、恋愛アドベンチャーとシミュレーションの違いなんですかね。それとも、ときメモだけなのか? わたしのように、目当てキャラひとり狙いという、ストーカー気質の人間には、納得のいかないシステムでした。
しかし、緑川キャラとデートなどできて、萌えは堪能しました。紹介してくださったかた、ありがとうございます〜。

別窓 | 碧風の優王女と真銀の聖騎士の希望 | top↑
| 姫騎士戦記 |