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橘玲インタビュー 投資の可能性と不可能性

2008年07月28日

橘玲インタビュー 投資の可能性と不可能性

ボーダー(国境)に意味はない

――いまだに多くの人が、海外投資はハイリスクだと思っているようですが。

 見知らぬものを忌避し、慣れ親しんだ環境に固執するのは人類に普遍的な性向で、原始時代には生存の技術として有用だったでしょうが、それが現在も通用するとは限りません。岐阜県の人が、「愛知県はハイリスクだからトヨタ株は買わない」と言ったら滑稽に思うでしょう。それは県境が、市場経済にとってなんの意味もないことを知っているからです。経済がボーダレス化、グローバル化するにつれて、国境も同様に「国家が市場に勝手に引いた線」でしかなくなってくるでしょう。

――それでも為替リスクがあるのではないですか?

 日本円のみを保有している人は、円の為替リスクを極大化しています。そのことを意識しないのは、戦後ずっと円の価値が上がって、為替リスクから充分な利益を得ることができたからです。世界には逆に、自国の通貨を保有するリスクに怯えている人がたくさんいます。

――為替リスクを避けるにはどうすればいいのですか?

 根本的な解決方法は、国家が恣意的に通貨を発行する悪習を廃し、世界通貨を創設することでしょう。しかしその実現にはかなりの時間がかかるでしょうから、個人的には、グーグルのような“innovative”な私企業が、主要通貨を時価加重平均したヴァーチャルな世界通貨をつくることを期待しています。それまでの間は、世界株ポートフォリオを保有することで、株式市場の時価総額に合わせて通貨を分散するのがもっとも現実的でしょう。

――海外市場といっても、いったいどこに投資すればいいかわからないのですが。

 不可知論の立場からすれば、そんなことは誰にもわかりません。だからこそ、世界市場全体に投資する、というシンプルで美しい投資法が存在するのです。

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