世界で最も売れたバイクと言えば、ホンダの「スーパーカブ」シリーズだ。世界百六十カ国で販売され、生産累計は六千万台を突破した。
八月一日に発売五十周年を迎える。広報誌「ホンダマガジン」夏号が特集している。誰もが手が届く自転車二台分の価格で、経済性や耐久性に優れた画期的バイクとして大ヒットした。
社史などによると、開発には創業者の本田宗一郎社長と技術陣が二年かけた。乗り心地を良くする分厚いシート、片手運転できるペダル式自動遠心クラッチ、排気量五〇CCの4ストロークエンジンなど、数々の独創的アイデアが盛り込まれた。
軽量化のために車体カバーにプラスチックを使った斬新なデザインが評判だった。スマートな車体はそれまでのバイクのイメージを変え、スカートの女性にも乗れると人気を呼んだ。
発売された一九五八年は、東京タワーが完成し、即席チキンラーメンも生まれた。スーパーカブは、高度経済成長の道をともに走り続けてきたが、今や日本経済は息切れ気味だ。ものづくり大国の地位も揺らいでいる。
本田さんは、社員への訓示で「作る者の喜び」と「売る人の喜び」とともに「顧客に喜んでもらう」ことがより重要だと語っていた。日本のものづくりの傑作としてスーパーカブを見直したい。