北朝鮮核問題をめぐる六カ国協議参加国の外相がシンガポールで初めて一堂に会し、非公式会合を行ったが、具体的な成果はなかった。顔合わせに終わったのは残念だ。
東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム(ARF)が開かれた機会をとらえての会合だった。公式の外相会合は六カ国協議合意に基づいて北京で実施されることになっている。米国はARF前後の開催を目指していたが、北朝鮮は六月に核計画を申告したものの、検証の時期や手順などについては調整がついておらず、日程の面からも公式の外相会合は無理と判断して非公式となった。
非公式とはいえ、外相が一堂に会することで、北朝鮮の核放棄に向けた具体的な取り決めが発表されるとの期待があった。六カ国協議議長国の楊潔〓外相によれば、北朝鮮の核計画申告検証のための履行計画を早期に作成することなどで一致したという。取りあえず北朝鮮との協議進展の機運をつなぎ止めることはできたといえようが、決意表明にすぎない。公式の外相会合の日程も決められず「適切な時期に開催する」としただけである。
北朝鮮の朴宜春外相と初めて接触したライス米国務長官は「検証という必須の課題を北朝鮮がやり遂げてくれるか注意深く見守る」などと検証作業の重要性を強調した。しかし、会合では踏み込んだ議論にならなかったとされる。
日本の高村正彦外相は、非公式会合で拉致被害者の再調査早期実施を要求したほか、ARF閣僚会議でも拉致問題を含む日朝間の懸案への対応を重ねて要請した。朴外相は「六月半ばの実務者協議の約束を重視している」と答えた。
六月の日朝実務者協議では、北朝鮮が安否不明の拉致被害者の再調査を約束した。外相レベルで北朝鮮が約束に取り組む考えを示したことは評価すべきだが、実務者協議での「再調査の具体的対応は今後速やかに調整」は一向に進んでいない。原則論では一致しても、具体的行動になると交渉を引き延ばすのは北朝鮮の常とう手段だ。
米国は、北朝鮮の核計画申告を受け、テロ支援国家指定解除を八月十一日にも実施する方向だが、朝鮮半島の非核化と拉致問題解決は決して譲ることはできず、安易に妥協すべきではあるまい。北朝鮮が求める経済・エネルギー支援にしても、日本の拉致問題の進展がない限り参加しないという方針は当然だ。毅然(きぜん)とした態度で北朝鮮と交渉を進める必要があろう。
厳しい暑さが続いている。気象庁の向こう一カ月の気温予想では、関東から九州まで平年より気温が高い。中国地方でも一時的な天気の崩れはあってもしばらくは晴れる日が多く、気温は高めに推移しそうだ。
まだまだ暑くなると覚悟しておかなければなるまい。昨年は八月に入って酷暑となり、月後半に岐阜県と埼玉県で七十四年ぶりに国内最高を更新する四〇・九度を観測し、高梁市でも三九・〇度を記録した。
暑さで気をつけなければならないのが熱中症だ。今年もすでに熱中症で倒れる人が各地で続出している。
近年、被害や予防法が繰り返し伝えられる割に、怖さが十分に浸透しているとはいい難いようだ。熱中症は、気象庁が昨年春、天気予報などに使う言葉として正式に採用した気象災害用語の一つである。
汗をかくことで体内の水分や塩分が減少し、体温が上昇して熱けいれんや頭痛、めまい、吐き気、意識を失うといった熱中症の症状が出る。悪化すれば心臓や肝臓の機能低下などで死に至ることもある。
専門家によれば、気温が三五度を超えると体から熱が逃げにくくなり、リスクが高まる。外出には直射日光を避ける工夫を心掛け、運動時はこまめに休憩を取ることだ。水分補給が大事で、ナトリウムを含むスポーツドリンクが適している。
体温の調節機能が未発達で体重の割に水分を必要とする乳幼児や、元来体に水分が少なく身体機能も衰えている高齢者には周囲の人が気を配りたい。熱中症は室内でも起こり得る点に、特に注意すべきだろう。
若い人たちも油断してはいけない。この時期、激しいスポーツを行う場合には指導者に十分な配慮が求められる。
(2008年7月27日掲載)