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2008年7月28日

◎「竹島」と日韓交流 まことに残念な中止の広がri

 日韓両国が領有権を主張し合う「竹島(韓国・独島)問題」の再燃で、両国間の交流事 業の中止や延期が全国的に相次いでいる。韓国側から理由抜きで「都合が悪くなった」と申し入れてくる事例がほとんどで、竹島問題の影響と推察できる。新潟県の例だが、小学校までが韓国訪問を中止した。まことに残念な影響の広がりだ。

 こうした中でも、石川県立工業高のスポーツを軸にした同校と韓国の高校生による交流 が行われたのが救いだった。この交流は県工が一九八七年に迎えた創立百周年を機に始めたものである。同校と韓国の複数の高校のスポーツ選手が三年に一回休む年をはさみながら交互に訪問し合ってきた。二十一年目の今年は韓国の東海(トンヘ)光煕(カンギ)高男子バレー部と大成(テソン)高バスケット部が金沢へやってきた。

 親善試合に先立ち、東海光煕高の朴世基校長は「スポーツだけでなく、青少年教育でも 、互いになくてはならない存在になれるよう努力したい」、大成高の黄世重校長は「多くの文化について学んで帰りたい」とそれぞれ述べた。再燃した竹島問題の影響が日韓交流に広く及んだ中での印象深いあいさつだった。

 共同通信のまとめによると、三十三都道県の自治体などが主催する交流イベント百四件 が中止や延期、規模縮小に追い込まれている。

 金沢市では姉妹都市の韓国・全州市に金沢市のシンボルでもある徽軫(ことじ)灯籠( とうろう)のレプリカを贈ることについて全州市から延期の申し入れがあったほか、同市の錦丘高を訪問することになっていた全州女子高から直前に中止を連絡してきた。両校は昨年度、国際交流で調印し、修学旅行などで生徒や教職員が相互訪問した仲だった。高岡市でも伏木高校を友好訪問する予定だった水原市の清明(チョンミョン)高が延期をいってきた。

 前向きの例として県工の他に、韓流スターのリュ・シウォンさんがゆかりの地、宮崎県 の観光大使の委嘱を受けている。指導者や個人の考え方にもよるのだろうが、交流は両国関係の未来をひらくものだ。大事にする寛容さを韓国政府に求めたい。

◎観光圏整備法が施行 加賀藩文化圏を全国区に

 隣接自治体同士の連携による広域観光地づくりを促す観光圏整備法が施行された。「観 光圏」を目指す地域が独自の事業計画を策定し、国から認定されれば補助が受けられるが、それにとどまらず、既存の行政の枠を超えた新しい切り口の観光エリアの存在を全国にアピールする好機となろう。

 これまで県境を越えて観光誘致を推し進めてきた金沢市と富山県西部六市の取り組みは 、観光圏の発想の嚆矢(こうし)とも言えようが、七市関係者があらためて百万石をキーワードに一致協力して魅力的な事業計画を策定し、「加賀藩文化圏」を全国に知らしめたい。

 観光圏整備法では、観光圏を形成する自治体、観光・商工業者や住民らが協議会を設立 し、「宿泊の魅力向上」「観光資源の充実」「移動の利便性向上」「案内・情報の提供」などの観点で、観光客が二泊三日以上滞在して域内を楽しめるような事業の実施計画を策定する。その計画が国から認定を受ければ、事業ごとに最大で約四割の国庫補助を受けられる。

 金沢市と富山県西部六市で設立した広域観光推進協議会は、これまで高岡御車山祭に金 沢市周辺からツアーを誘致し、金沢から五箇山周辺への定期観光バスを企画するなど、域内の観光交流が徐々に実績をあげている。

 今年に入って、東海北陸自動車道の全線開通による交流エリアの拡大や、北陸新幹線の 金沢開業を見据えた戦略プランを打ち出し、「加賀藩」をテーマに七市内を結ぶ十八の観光ルートを提案するなど、統一感のある観光推進策も打ち出している。

 観光圏整備法による後押しを得られれば、域内観光から「全国区」へ飛躍する大きなス テップとなろう。七市による広域観光連携の実績をさらに発展させ、ミシュランの「三つ星」観光地である兼六園、国宝瑞龍寺、世界遺産の五箇山合掌造り集落などを中心に、海外にもインパクトのある「加賀百万石」を前面に出した誘致策を提案したい。観光圏をめざす石川、富山の各地の取り組みの先陣を切る意味でも価値がある。


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