テコンドーの起源 |
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創始者は自らの著書の中で次のように語っている。
僅か五尺短身の私が今日までいかなる恐れもなく信念のままに生き、正義を叫んで来られたのは言うまでもなくテコンドーのおかげである。 生まれながらにして虚弱体質であった私は、光州学生事件の余波で起きた同盟休学(学生ストライキ)に参加したため、無期停学処分となり学校へ通えなくなった。これを心配した父が私をオクラム(ハン・イルトン)氏のもとに預けることとなったが、この時私はまだ12歳(満11歳)だった。 光州学生事件; 私が武術に足を踏み入れることになったのは、書道を教えて頂いたオクラム(ハン・イルトン)先生が私の健康を気遣って下さり、書道以外にも時折、テッキョン(朝鮮半島に古くから伝わる古武術/民俗遊戯)の初歩的な動作を教えて頂いたことから始まった。 1938年、日本への留学出発の幾日か前、賭け事をして思いもよらず生じたある事件によって強い力を身につけない以上到底故郷へは帰れない苦しい立場にあった理由から、私は唐手(空手)を習い始めた。その後、幸か不幸か唐手の有段者になることにより私が帰ってくることだけを待っていた強い相手からの復讐戦を避けることが出来たし、ひいては朝鮮の独立運動であった平壌学兵事件を指揮することが出来たのである。反面、唐手の有段者という理由のために日本の陸軍刑務所と平壌刑務所で人並みはずれた精神的苦痛と肉体的束縛(過酷な拷問)を受けることとなった。 平壌学兵事件 1946年3月、陸軍少尉(当時は陸軍参尉と言った)に任官された私は、全羅南道光州にある朝鮮警備隊第四連隊に赴任して中隊長の職を任ぜられると、強軍育成を目標とし全中隊に唐手を教えた。 テコンドーは東洋の倫理道徳を精神的根幹とし、現代科学の原理をもって最大の力を出せるようにし、攻撃と防御の方法には軍隊戦術を採択した上、私の人生観が注ぎ込まれているところから、唐手(空手)やテッキョンは多少参考にはなったが、それらとは全く違う原理と理論をもって研究され体系化された特異な武道であることを此処に明記しておく。 1959年3月、ベトナムと台湾に歴史上初めて国軍テコンドー師範団を引率したことを契機に私は高尚な精神と飛び抜けた技術を後世に残すことだけが唯一私が永世の中で生きられる道であることを切実に感じる様になり、テコンドーの正しい教育を通じて… 1.健全な精神と強い力を育て、各々に於いては常に正義を貫ける自信力を持つようにし 2.また宗教、人種、国境、もしくは思想に拘ることなくみんなが実の兄弟のような関係を持ち 3.正義と道徳、信義と人道主義が最上となる平和な人類社会の建設に献身することを理想とした。 私は、またこの高貴な武道を全世界に普及することによって、分断された我が国の統一を促進するという希望を抱き、技術研究と国際的普及に全心血を注ぎ今日に至った。 テコンドーの研究は大きく分けて精神面と技術面の二つの分野で進行されたが、精神修養とは形而上学に属するものだけに痕跡はなく聞くにも聞けず、また見るにも見えないそれは正に限りなく広く深いものであり、まして修養途上にいる私にとっては一言で言い表すことが難しい。 テコンドーを自分の体のように愛し大切にする人はこれを絶対に濫用し、不名誉な形で使用してはいけない。トゥルの名称はこの五千年間、一度も他国を侵犯した事実が無く唯一、侵略者達を追放し、また国を守り抜いた朝鮮半島の代表的な人物達の名前に因んだものである。このことをよく理解すればテコンドーが正当防衛と正義の為のものだけに使われる武道だと言うことを悟ることになる。 次に技術面においては、どんな状況にも対処出来得る多様な動作と方法を次のようなところに重点を置いて研究した。 1.全ての動作は科学的公式と原理によって最大の力を出せるようにする。 2.テコンドーを全く知らない者でも動作の正しさと誤りを容易に判定出来るようにする。 3.角度と距離を明確にすることによって効果的な攻撃や防御を行えるようにする。 4.目的と方法を明確にし、容易に習ったり教えられたり出来るようにする。 5.合理的な教育方法をもって老若男女、誰もが分け隔てなく修練出来るようにする。 6.正確な呼吸法をもって速度増加は勿論、疲労を減少させるようにする。 7.人体のどの急所でも攻撃可能に、またどの攻撃も防御可能にする。 8.人体の構造特性によって使用可能な攻撃部位を明確にする。 9.体育や娯楽としても楽しめるようにする。 10.柔らかくリズミカルな動作をもって美的感覚を表現できるようにする。 11.適切な方法と統制をもって健康増進を促す反面、児童達の発育成長を妨げたり、けがを負ったりしないようにする。 12.各トゥルにある人物及び事柄の精神と活動を動作で表現する。 私がテコンドーを武道だ科学だと、また芸術だと呼ぶ理由がまさしく此処にある。 |
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テコンドー創始者 崔泓熈 著 テコンドー百科事典朝鮮語版より 翻訳:金 省德 |
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