北京五輪開幕を間近に控えた主会場の国家体育場周辺では、大量の武装警察が動員され、緊張感が高まっている=中田徹撮影
北京駅では、駅の敷地内に入る際と駅舎の入り口で二重に検査。さらに不審な乗客を個別に調べている。五輪で仕事がなくなり、安徽省に帰省する出稼ぎ工員(38)は、ペンキのバケツに入れていた食品や衣類を3回も調べられた。「北京に来て10年になるが、こんなに厳しかったのは初めて。でも、五輪のためには仕方ない」と話す。
そんなさなかに、雲南省昆明市で2人が死亡する路線バス連続爆破事件が起きた。総勢11万人の警備態勢で臨む北京五輪組織委員会は「安全面の情勢は平穏だ」と自信を示すが、市民の間でもテロへの不安が高まっている。
陸上とバレーで計3日分のチケットを持つ大学教授の女性(46)は、見に行くかどうか迷い始めた。「テロなんて別の国の話だと思っていた。でも雲南の事件は自分の生活のすぐ隣で起きたと感じる。競技場のどこで爆発が起きるか分からないし、やっぱり家で見るのが一番安全かも」。とはいえ2回目の抽選で当たった貴重なチケットだ。8列目の席もあり、夫の分も合わせてチケット代で月収の半分ほどを費やした。
「自分の国で五輪なんて一生に一度見られるかどうか。もう少し悩んで決めます」(北京=延与光貞、阿久津篤史)