余録

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余録:インドネシアの介護士受け入れ

 インドネシアの人たちは、大の子供好きだ。他人の子にも優しく、よくレストランなどで子供が走り回っているのを見かけるが、怒る人はまずいない。店員は愛想がよく、いつもにこやかに応対する▲かの国に駐在経験のあるビジネスマンからそんな話を聞いた。現地で長年、料理店を経営する日本人も体験記で「この国の人は、とにかく子供をかわいがる」(重田久仁子著「インドネシアにおいでよ」連合出版)と指摘する。ホスピタリティーにあふれた国民性なのだろう▲その国からもうすぐ、看護師・介護福祉士の候補者約300人が来日する。両国の経済連携協定(EPA)に基づいて派遣される第1陣で、日本が医療・介護分野で外国人労働者を本格的に受け入れるのは初めてだ▲福祉現場では、低収入と過酷な労働により、離職者が相次ぐ。だから、少子高齢化で深刻さを増す介護人材の不足対策として、外国人労働者に注目が集まる。今回来日する300人がモデルケースとなるか▲だが、日本側が低賃金の労働力としか見ないのなら、期待通りにはいかないだろう。インドネシア人たちは異国の地での仕事に戸惑うことが多いに違いない。充実した支援体制や働きやすい環境があってはじめて、本来のホスピタリティーを発揮して、患者やお年寄りの世話ができる▲文化や習慣、宗教が異なる人々とどう接していくのかも大切だ。候補者には日本についてよく学んでもらわなければならないが、こちらも相手を尊重する心構えがなければ、互いに理解し合えるはずがない。私たちが異民族・文化と共生する意識を持ってこそ、「労働開国」は意味あるものになる。

毎日新聞 2008年7月28日 0時09分

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