ベテランの一振りがどん底のチームを救った。粘投で踏ん張っていた先発・岩隈久志が、終盤8回に同点に追いつかれる。しかし、ここを同点で踏ん張ると、打線が嫌な流れを止める。9回、先頭の藤井彰人が右安を放つと、犠打と内野ゴロで三進し2死三塁とチャンスを広げる。ここで、ベンチはベテラン吉岡のバットに託した。
「『必ず打ち返してやる』という強い気持ち」で、打席に入ったと振り返った吉岡。マウンドには5番手・菊地原。その菊地原はストレートで押してくる。カウントは2−2。そして5球目、初めての変化球・スライダーが来る。アウトコースだったが、強引に巻き込んで引っ張ると、打球はレフトへ。吉岡は「先っぽだったので、外野フライかと思った」と振り返ったが、レフトの小瀬がセンター寄りに守っていたため、打球は左翼線に転がった。
打った瞬間、捕られるかと思ったという吉岡だったが、打球を見て「左中間に守っていたので、落ちるかなと思った」という。今年4本目のヒットが、今シーズンの初打点。しかも、連敗をストップさせる貴重な適時打となった。吉岡は「今年、初めて仕事をしたかな」と笑った。
開幕から二軍スタート。6月に一度、一軍に登録されたが、結果を残せずに約2週間で二軍落ちした。「(二軍は)楽しようと思ったら、楽できるので、メリハリを付けてきた」という吉岡。状態は「良かったり、悪かったり」と納得できる状態が維持出来ていないが「(気持ちを)切らさないできた」という。その辛抱が、この日の適時打につながった。苦しいチーム状態が続く中、ベテランがチームに活を入れた。