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近代文学の名作昭和展:肉筆からわかる、性格や推敲の軌跡--東京・日本近代文学館

 日本近代文学館(東京都目黒区駒場)で、プロレタリア文学から戦後の芥川・直木賞作家まで、名作原稿をレプリカや初版本、肖像写真などで紹介する「近代文学の名作 昭和」が開かれている。原稿は複製だが、筆づかいや赤ペンでの修正など本物そっくりで、作家の性格や悪筆ぶり、推敲(すいこう)の軌跡などがわかって興味深い。9月20日まで。

 戦後無頼派を代表する太宰治の原稿は、『人間失格』『グッド・バイ』『斜陽』『桜桃』の4作品。ほかの作家のように400字詰めでなく、半分の200字詰原稿用紙を使っているのが特徴。同文学館図書資料部の鎌田和也さんは「太宰は息の短いセンテンスを書くので、200字詰めがリズムに合っていたようだ、と家族が話しておられた」と語る。

 「おい、地獄さ行(え)ぐんだで!」で始まる、小林多喜二の『蟹(かに)工船』の原稿は、1928年に書き始めたとみられ、翌年、雑誌「戦旗」5、6月号に掲載された。くせのないわかりやすい字で、銀行員だったという多喜二のきちょうめんさがうかがえる。北海道の蟹工船で行われた過酷な労働と、それに抵抗して立ち上がった労働者を描くプロレタリア文学の代表作だが、発表後は、削除や発禁などさまざまな圧力があったという。

 このほか、宮沢賢治『銀河鉄道の夜』、大仏次郎『赤穂浪士』、大岡昇平『俘虜記(ふりょき)』、有吉佐和子『紀ノ川』、三島由紀夫『春の雪』の原稿など多彩な内容だ。【佐藤由紀】

毎日新聞 2008年7月23日 東京朝刊

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