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◆ベストセラー「○○万部」ってホント?
なるほドリ 「『女性の品格』が306万部のベストセラー」なんて記事を見かけるけど、ベストセラーはだれがどう決めているの?
記者 元になるデータは大きく2種類あります。一つは紀伊国屋書店など大手チェーン店の売り上げ順位。もう一つはトーハンなど本問屋に当たる大手取次会社が全国の書店をサンプル調査して出す順位です。「全国の売り上げベスト10」と紹介されるのは取次のデータに基づくことが多いですね。でも実際に売れた部数はナゾなんです。
Q えっ、じゃあ「306万部」という数字は何?
A 出版社が公表する印刷部数です。この中には書店の店頭に置いてある本や、後で返本される分も含まれているんです。
Q すると、ベストセラーが何部売れたか、本当のところはわからないの?
A そこで注目されているのが、オリコンが4月から始めた推定部数付き「“本”ランキング」です。
Q どう違うの?
A 音楽情報会社として培ったランキング手法を使って、1554の大手書店のみならず、ネット書店のデータも取り入れて全国の売り上げを推計しています。これだと、国内の全販売総額の30%をカバーしていて、例えば「女性の品格」は、4月14~20日の1週間に1万3031部売れたと推定できます。これまで客観的な実売部数の調査がなかったので、出版社も書店も関心を寄せています。
Q 販売部数が分かると何がよくなるんだろう?
A 週単位、月単位での順位だと、映画の原作のような話題書が上位に入る傾向があります。どうしても瞬間風速なんですね。でも、オリコンの場合、過去の推定累積部数も出るので、じわじわと売れるロングセラーにも光が当たると考えられます。
Q オリコンの部数をそのまま信じていいのかな?
A 調査のサンプルとして今の協力店が適切かは、よく見極める必要があります。例えば、ネット書店の部数は若者の志向を表しても、高齢者の購買を反映しない可能性があります。取次など他の「ベストセラー」と比べてみるのも実態を知るのに大切でしょう。(学芸部編集委員)
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毎日新聞 2008年4月29日 東京朝刊