【上海・鈴木玲子】犯行声明は、地方の治安対策の手薄さを当局に突きつけた。少数民族問題を抱える中国で、地方のテロ封じ込めが極めて困難であることを露呈している。
雲南省は少数民族が最も多く56民族のうち52民族が暮らす。省人口約4200万人のうち少数民族が4割近くを占める。北西部をチベット自治区に接し、南部はミャンマー、ラオスと国境を接する。ミャンマー側の国境付近にはウイグル族の村も点在する。景勝地を抱える昆明には外国人が多く訪れ、高地を利用した五輪出場選手の訓練基地もある。
昆明市当局は事件後の23日、事件への関与が疑われる乗客が持っていたと見られる手提げ袋と同じ型の写真を公開。情報提供者への報奨金額を引き上げるなど、五輪前の早期解決に躍起だ。しかし大きな進展は見えず、捜査の遅れは否めない。
一方、五輪開催都市もテロの恐怖にさらされている。声明では5月5日に上海市内で起こった路線バス爆発も「トルキスタン・イスラム党(TIP)」志願者による犯行だと主張。爆発では3人が死亡、12人が負傷した。
ただ、新華社通信によると声明後、犯行が指摘された昆明、上海の公安当局は26日、いずれも「テロ攻撃ではない」と否定した。また声明では17日に浙江省温州、広東省広州でも爆破テロを起こしたと主張しているが、地元当局はいずれも認めてはいない。
しかし上海では、五輪開催中に市内のサッカー競技場を襲撃することを計画したテログループも摘発された。公安当局は「テロの脅威は依然存在する」と警戒を強めている。
毎日新聞 2008年7月26日 20時41分(最終更新 7月27日 1時27分)