世界貿易機関(WTO)の多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)の非公式閣僚会合で、ラミー事務局長が25日提示した大枠合意の裁定案は、日本にとって農業分野のさらなる市場開放を迫る厳しい内容になった。特に日本が問題視するのは、例外的に関税削減幅を低く抑えられる重要品目の数。だが、日本の主張を支持する国はほとんどなく、裁定案をくつがえすのは容易ではなさそうだ。
裁定案は、先進国の重要品目数を全品目の4%とし、低関税の輸入枠を拡大した場合に2%の上乗せが認められる。これに対し、日本は8%を譲れない線としてきた。
日本の全農産品は1332品目。日本が主張する8%が認められれば、現在200%以上の高関税を課している101品目は少なくとも重要品目として大幅な関税削減は避けられる。だが、6%の場合、対象になるのは約80品目。コメ類だけで17品目あり、これに麦や乳製品類を加えると96品目になり6%のラインを超えてしまう。
重要品目以外は関税を7割削減しなければならず、現在1706%の高関税を課しているコンニャク芋が重要品目から外れれば、税率は一気に約510%に下がる計算だ。そうなれば中国など低価格のコンニャクの輸入量が急増するのは必至で、国内約4200戸のコンニャク農家には死活問題となる。
現地で交渉に当たる若林正俊農相は裁定案を「非常に不満だ」とし、今後も8%を強く訴える構えだが、米国や欧州連合(EU)は重要品目数について異論はなく、日本は孤立状態になっている。
閣僚会合には「(決裂すれば)世界経済に大変な影響を及ぼすので、そういうことがないよう努力していこうとの空気がある」(若林農相)といい、自国の主張だけを押し通すのは難しい状況で、日本は極めて厳しい立場に追い込まれている。【行友弥、平地修】
毎日新聞 2008年7月26日 22時03分(最終更新 7月26日 23時43分)