遅きに失したが、それでも手術は必要だ。行政と密接な関係を持つ公益法人について、政府が見直しを進めている。福田康夫首相は国からの発注業務などを洗い出し、公益法人への財政支出を全体で3割削るよう指示した。公費の無駄遣いをチェックするため政府が25日設置を発表した有識者会議が、作業の監視にあたる。
所管官庁のOBが公益法人に天下りし、コスト意識が薄い随意契約で国から業務を受注したり、補助金を受ける。こんな構造がこれまでほぼ手つかずで温存されてきた。国からの支出、天下り、公益性の三つの観点から監視を強め、中央官庁とのいびつな関係を今度こそ是正すべきである。
公益法人は収益事業への法人税が軽減される。06年10月現在、約2万5000あり、国所管法人は6776法人。うち1974法人が国や独立行政法人から支出を受けている。
政府が重い腰を上げたのは、国土交通省所管の公益法人による職員旅行での道路特定財源の無駄遣いがきっかけだった。道路関係法人は今後3年で現在の50法人を16法人に減らし、道路財源(670億円)支出は半減されることになった。それ以外の国所管の主要350法人も82法人に国発注事業の見直し、42法人に随意契約から一般競争入札への移行を促すなどした。
ただ、350法人中、現段階で解散の方向が固まったのは2法人にすぎない。首相は1974法人全体を見直し、国の支出の約3割(2900億円)を節約するよう指示した。しかしこれは積み上げた数字ではなく、よほど手綱を締めないと言いっぱなしに終わる。公益法人の業務請負が真に必要で効率的か、ゼロベースの点検が必要だ。
「官」と法人を「ヒト」で結ぶのが天下りだ。06年10月時点で国所管3049法人に8054人もの所管官庁OBが理事として天下っている。理事全体の3分の1超を天下りが占め、国の基準に抵触する法人も昨年7月時点で166ある。政府は新設する官民人材交流センター(新人材バンク)であっせんを一元化し天下りの監視を図るが、「カネ」「ヒト」両面の規制が欠かせない。
公益法人については制度改革も進んでおり、既存の法人が優遇措置を受けるには今年12月以降、有識者からなる「公益認定等委員会」に申請し、公益性を新たに認定されることが必要となる。所管官庁が許可権限を失う意味合いは小さくないが、新法人への移行まで、なお5年の猶予期間がある。
国所管の法人で今回、政府が運用改善を促したものについては、新法人への移行申請にあたり、無駄遣いを監視する有識者会議による事前審査を行うべきではないか。そのくらいの緊張感がないと、長年のぬるま湯体質は変わるまい。
毎日新聞 2008年7月26日 東京朝刊