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脳外科医
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決して「数」だけの問題ではないでしょう。「数」の議論へのすり替えはもっとも安直かつ議論を本質から遠ざける行為ではないでしょうか?
今、産科も含めた救急医療からなぜ医師が手を引いているのか?つい10年ほど前までは救急車を断ることなど考えもしなかった。しかし、ここ5、6年ほど、皆当たり前のように救急車を「専門外」と称して断るようになっている。いえ、今でもその風潮に少しでも抗おう頑張っている医師もいますが、常に訴訟リスクと裏表です。
90年代半ば頃までは、医療訴訟においても、「その医師の判断」であれば尊重されていた。それが90年代終わり頃からでしょうか、その判断、ときには「結果」すら100%以外は認めないとの風潮になっているように思います。よって一般人でも容易に可能な応急手当すら医師が「専門外」として拒む(もしくは患者が専門医を求めてそれに救急車が振り回される)ようになっているのが現実です。
「100%以外は認めない」ならば、当然我々は神ではないのだから100%は不可能ですと救急の現場から立ち去ることはあまりにも自明。
他の職種、例えば裁判官の判断、警察の判断、マスコミの報道、金融、企業、、、、は過ちは許されるが、医者は許さない、、、、、、
これでは誰も救急などできないでしょう。産科では10万人あたりわずか7人しか妊婦は死なないという世界に冠たる成績を残しながら、その7人の死を許すことができず医師を逮捕しているのがこの日本です。産科がどんどん閉鎖されるのはあまりにも当然でしょう。間違っても「数」の問題ではない。
リスクのあるお産から手を引き、不妊治療だけをしてめでたく妊娠したら後は知らない、という医師を私は決して責めることはできません。
ましてや専門外を診るなどとんでもないと考える医師が増えるのは必然の成行きでしょう。そこを穴埋めしようといくら医師を増やしても、例えば地方の基幹病院で365日全科の医師を当直も含めてそろえることなど決してできるはずがない。今の日本が抱える医療問題は間違っても「数」の問題ではない。あらためて考え直していただきたい。 |
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Date: 2008/07/26/18:00:50
No.32
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