チューブラータイヤの剥し方と貼り方 2002年4月12日(金)
自転車整備に関する書籍や特集記事をあれこれ見てて、以前から不思議に思っていたのですが
ロードレーサー(あるいはトラックレーサー)のチューブラータイヤに関して、貼り方を解説したものはあれど
その剥し方を解説したものが無い。
で、その実態を見ると、うまく剥がせずにリムを傷だらけにしてしまっているケースもあったりして
そういうことなら、ひとつ整備簿で取り上げてみようと思い立ちました。まあ剥し方の一例として御覧下さい。
今回は、ちょうどリムの交換時期が来たチューブラーホイールがあるので
同じタイヤを古いリムから外し、新たに組み直したホイールに貼るというケースを題材に解説します。
【タイヤを剥す】
まずは、タイヤから空気を抜きます。
チューブラータイヤは殆ど(全て?)がフレンチバルブになっているので
バルブのネジを緩めて指で押さえてやればプシューと音を立てて抜けていきます。
空気が抜けたら、バルブから一番遠い反対側から剥し始めます。
ま、バルブのそばでなければ何処から剥し始めてもいいんですけどね。
いきなりまともに引っ張ってもそう簡単にタイヤは剥がれてくれませんので
以下のとおり段階を踏んでジワジワと剥がしていきます。
第一段階。
横から指でジワリと押さえてタイヤを引き起こし、接着を引き剥がします。下の写真参照。
左右両サイドとも同様に剥します。
(ここでタイヤサイドを強く擦ると、表面の薄いコーティングが剥がれる事があるので注意!)
一度こうしてタイヤを浮かし接着をはがしてやれば、手を離してタイヤが元の位置に収まっても
接着力は元通りには回復しません。コレをやることで、以下に続く作業が楽になります。
上の左側の写真で白く見えるのがリムフラップ(たいてい綿製です)と呼ばれるものですが、
このリムフラップがタイヤから剥がれないようにして下さい。
べつに剥がれたところで、改めてタイヤに接着しなおせばいいようなものですが
精神衛生的によろしくないので、剥がさずに済むものなら剥がさずに済ませましょう。
リムからタイヤをはがす際に、接着が強すぎてどうしてもフラップがタイヤから剥がれそうな時は
他の場所から剥し始めましょう。
第二段階。
部分的に接着力を弱めたら、今度はタイヤとリムの間に
マイナスドライバー(あるいはタイヤレバー)を刺し込み反対側へと突き通します。
この時に、ドライバーでリムを強く擦って傷つけないように
リムからドライバーの軸を浮かせるように力を加えながら滑り込ませていきます。
上の右側の写真のように、片手でタイヤを摘み上げながら滑り込ませると良いです。
ドライバーの軸を反対側まで刺し通したら、あとは楽勝です。
片手でホイールを押さえ、片手でドライバーの軸を掴んでタイヤもろとも引っ張り上げます。
バリバリ、と音を立てて面白いようにタイヤが剥がれてくれます。
ドライバーの軸の位置を順次ずらしつつ、少しづつはがしていきます。
20〜30センチほども剥せば、下の写真のようになります。
部分的にタイヤがリムから脱落してくれれば、もうドライバーは要りません。
第3段階。
直接タイヤに指をかけて、ジワリジワリと剥がしていきます。
で、タイヤのバルブ付近は、がさつに引っ張ると傷めやすいので一番最後に剥します。
両側に手を添えて、真っ直ぐに引き上げましょう。
これでタイヤ剥しは完了です。おつかれさまでした。
【タイヤを貼る】
チューブラータイヤは、リムセメントと呼ばれる接着剤を使ってホイール(リム)にタイヤを貼るのですが
持ち合わせが無くて合成ゴム系接着剤を使ったなんて話を聞いたこともあります。これは絶対にダメです。
見た目は似てますが、この両者は似て非なるもの。絶対にリムセメント以外のものは使わないで下さい。
後でえらい目に会いますよ。
ちなみに上の写真、一番右がパナレーサーのリムセメントで缶入りタイプです。
缶のフタにハケが付いてるので、手を汚さずに作業が出来て重宝します。
写真の真ん中が同じくパナレーサーのリムセメントで、チューブ入り。
一番左側に写っているのが、ビットリア(イタリア)のチューブ入りリムセメント。
ビットリアのリムセメントは、中身は赤茶けた色をしています。
話によると、リムセメントには接着力の強いもの(主に日本製品)と弱いもの(主に海外製品)とがあって
カーボン製のチューブラーリムには接着力の弱いものを使わないと、タイヤを剥す際に
リムのカーボン繊維を傷める(タイヤもろとも引き剥がしてしまう?)とか....お気をつけあれ。
余談ですが、チューブラータイヤで走行中にパンクした際は
スペアタイヤを装着するのにリムセメントを使うと、ちょっとやそっとの乾燥時間をとったところで
走行中にタイヤがずれるのは避けられないので
思い切ってリムセメントを塗らずに装着した方が良かったりします。
さて、今回は使い古したタイヤを貼るので必要ない作業ですが、
新品のチューブラータイヤをリムに貼る際には、こんなひと手間が必要になる場合もあります。
タイヤを足に引っかけて、両手で(背筋力測定の要領?で)グイとタイヤを引っ張って伸ばします。
こうしないとキツくてリムに嵌められないケースがあるので、リムにセメントを塗る前に
タイヤがうまくリムに嵌まるか試してみて下さい。楽に嵌まれば良し。
キツくて嵌まらなければ上記の策をお試し下さい。
但し、力任せに引っ張ってタイヤを引き千切らないように....
と、前置きはこのくらいにして、いよいよタイヤを貼っていきます。
まずはバルブをリムの穴に通し、そこから順に貼っていきますが
この時にバルブがホイールの中心に向かって真っ直ぐ立つように位置を合わせて下さい。
もし極端にバルブが斜めに向いて(=バルブの穴の位置がズレて)いると、空気を入れたときに
その高圧に負けて、バルブ付近でチューブが断裂してパンクしてしまいます。おお怖い。
バルブの位置を合わせたら、両手でタイヤを引っぱり伸ばしつつ、徐々にタイヤをリムに乗せていきます。
この辺は自転車整備の解説書によく出てくる光景ですので、ざっと説明を進めます。
最後の数十センチというところまで来たら、ホイールの上下を反転させて
両手の指でタイヤを持ち上げるようにして(かなり強い力が要りますよ)リムの縁を乗り越えさせ、
接着面に乗せるようにします。
ここが上手く出来ないと、タイヤサイドがリムセメントで汚れたりしますが
そこは経験を積んで覚えるしかないですね。
タイヤが乗ったら、センターがきちんと出ているか(タイヤがリムの真中に乗っているか)を確認します。
まずは空気を入れる前に、リムサイドに注目。
リムフラップの見え具合を両サイドで見比べて参考にし、左右どちらかに偏っているようなら修正します。
次は、タイヤに少しだけ(1〜2気圧)空気を入れて、同様にリムフラップの見え具合で確認。
最後の仕上げは、下の写真のようにハブ軸を両手で持ってホイールを回転させ、
タイヤのトレッドパターンが左右に傾いていたり波打ったりしないか、じっくり目で確認しつつ修正します。
この時、空気を入れ過ぎていると修正が出来ませんので、空気圧の上げすぎには注意しましょう。
タイヤのセンター出しが終わったら、実際に使用する空気圧(あるいはタイヤの適正空気圧の上限近く)まで
空気を入れて、リムセメントの乾燥待ちです。
そうそう、タイヤを嵌め終わったら、リムサイドに付着したリムセメントや油分を拭い取って
ブレーキシューの当り面をキレイにしておくのをお忘れなく。
(終わり)
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