カエルは昔から人間の身近にいる存在でした。
平安時代末の鳥獣戯画では擬人化されたカエルたちが大活躍。松尾芭蕉も「古池や蛙(かわず)飛び込む水の音」と詠みました。子どものころ、輪唱で歌わされたのが「かえるの合唱」でした。最近では、宇宙から来たカエルが主人公のアニメ「ケロロ軍曹」が幼い子どもたちに大人気です。
そのカエルたちが今、減少の危機にあります。気候変動、農業の変化による田んぼの荒廃。人の持ち込んだ伝染病や外来種の導入など。原因のほとんどが人間活動で引き起こされた生息環境の悪化によるものです。最近ではカエルツボカビ症も脅威です。中南米のある種のカエルは絶滅状態といわれます。カエルは世界中で約六千種いますが、そのうち三割が絶滅危惧(きぐ)種です。
今、国際自然保護連合と国際動物園水族館協会は、二〇〇八年を「国際カエル年」として、カエルたちの保護に乗り出しています。ノアの箱船になぞらえた「アンフィビアン・アーク(両生類の箱船)」もその活動です。六千種のカエルのうち五百種を動物園や水族館で繁殖させ、絶滅を防ごうというものです。
広島市内の安佐動物公園では、地元で絶滅危惧種に指定されたダルマガエルを繁殖させ、ボランティアの協力を得て新生息地をつくり出そうとしています。
「やせ蛙(がえる)負けるな一茶これにあり」
カエルを通して自然環境に目を向ける人の輪が広がっています。
(広島支社・秋山清和)