米国自動車企業(ビッグ3)の経営が、急速に悪化している。収益は大幅赤字となり、最大手ゼネラル・モーターズの株価は、1954年以来の安値となった。経営破綻(はたん)も、非現実的な予想ではなくなった。
経営悪化の主因は、米国で車が売れなくなったことだ。6月の販売台数は、前年比2割も減少した。主力車種であるスポーツ用多目的車(SUV)やトラックの落ち込みは大きく、フォードの場合、それぞれ55%、38%の減少となった。
販売不振の背景に、ガソリン価格の高騰や過大な借り入れに伴う債務返済負担の増大が、家計から余裕を奪っているという、経済的要因があることは疑いない。
しかしそれ以上に、ビッグ3の経営戦略が間違っていたことが大きい。販売の主力はSUVなど燃費の悪い大型車であり、ガソリンの値上がりに伴う消費者離れが、予想以上に大きかった。また、値上がりした住宅を担保にした借り入れの増加が、自動車の購買意欲を刺激していたが、住宅バブルの終焉(しゅうえん)とともに、それも終わった。
つまりビッグ3は、ガソリン価格が上がっても消費者は大型車を買い続けると期待し、また住宅バブルによって実力以上に押し上げられていた販売を実勢と誤認して、もうけが大きい大型車に経営資源を過度に集中していたわけである。それが戦略上の大きな過ちであったことを、今日の苦境は示している。
振り返ると80年代も、やはり原油高の下で、大型車にこだわり燃費に優れた小型車を作ろうとしなかったことが、ビッグ3の凋落(ちょうらく)と日本車の台頭をもたらした。ビッグ3は、その過ちに学ばなかったといわざるを得ない。(山人)