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年金機構:「社保庁許すまじ」自民が押し切る 職員採用で

 社会保険庁を廃止して10年1月に発足する「日本年金機構」の職員採用問題で、懲戒処分歴のある社保庁職員867人の扱いをめぐる厚生労働省と自民党の綱引きは23日、厚労省が「全員不採用」という自民案を受け入れて決着した。次期衆院選をにらむ自民党が「組織刷新」をアピールする狙いで厚労省を押し切った。

 厚労省は当初、政治家らの年金記録のぞき見などで懲戒処分を受けた867人を雇う場合は期限付きの有期雇用とする案を持参。ところが、処分を受けた職員が引き続き年金に携わる案に自民党は猛反発。優秀なら正規職員になれる道を残していたことも同党を刺激し、一蹴(いっしゅう)された。

 慌てた厚労省は休職せずに組合活動に専念していた「ヤミ専」職員らと、停職・減給処分歴のある247人を不採用とする修正案を提示。しかし、最も軽い戒告の620人は有期雇用で残る可能性がある内容に自民党は「党の存亡にかかわる」と激怒。結局、厚労省が折れる形となった。

 こうなれば、もともと自民党の意向を熟知している舛添要一厚労相の変わり身は早く、23日、党に受け入れを伝えるや福田康夫首相に電話を入れ、「政治決断をしました」と報告。首相も「結構です。国民に新しいイメージを持たれる組織にしてください」と応じた。

 自民党は04年の参院選で苦戦、07年の参院選では与野党逆転を許した。年金記録漏れなど不祥事続きの社保庁をA級戦犯扱いする党内には「社保庁許すまじ」の空気がまん延している。

 中でも、社保庁改革を政権浮揚につなげようとし、逆に年金記録漏れの直撃を受けて倒れた安倍政権で官房長官を務めていた塩崎恭久氏らは一律不採用を主張。塩崎氏は「被処分者の採用は国民感覚からかけ離れている」と強調する。葉梨康弘衆院議員らはヤミ専に絞って不採用とする議員立法を進めている。

 自民党が社保庁批判に力を入れるのは年金不祥事に労組員が関与してきたことや、民主党が社保庁労組の支持を受ける点を喧伝(けんでん)する思惑もある。新機構自体に反対する民主党が賛同することはないと見越し、「民主党は社保庁改革に後ろ向き」と印象付ける狙いもあるようだ。

 パフォーマンス優先の人減らし策に厚生族は懸念を抱きながらも沈黙を守る。厚労省幹部は「こういう時にまとめる人がいない。だから厚生族はだめなんだ」と吐き捨てるように言った。【吉田啓志】

毎日新聞 2008年7月23日 23時05分(最終更新 7月24日 12時04分)

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