精神科に通い続けることそのものが目的になってしまったら。
あるいは、何かが改善することを期待せずに、ただ精神科へ通うことが習慣になってしまったら。
私自身はそれをとてもよくないことだと思わずにいられません。
というのも、いつまでも精神科の「現役」の患者さんであり続けることが、患者さん本人の自信をくじくことにつながるだろうから。
通院から「卒業」できない状態が長く続いていることで、もしも患者さんが何か新しいことにチャレンジしようと思ったとしても、「まだ私にはそんなことはできないかもしれない、何しろ精神科に○○年も通い続けているん だから」と自分自身を過小評価してしまうことが起こりうる…実際患者さんがそうおっしゃるのを聞いたこともあります。
通院が長びけば長びくほど、精神科患者としての自分のキャリアを重ねれば重ねるほど、今の本当の自分の姿に自信が持てなくなってしまう。それは大いにあり得ること。
このことは患者さん自身にとって大きなマイナスだろうと思います。
そして、もしかして…本当にもしかしたら、
状態に大きな変化もなく、定期的にきちんと受診してくれる患者さんのことを、主治医はありがたく思っているかもしれません。
なぜなら、今の保険診療の制度では、短時間にたくさんの患者さんを診療する医師のほうが、ひとりの患者さんにじっくり時間を掛ける医師よりも収益があがるシステムになっているから。
新しい患者さんのことをじっくり知ろうと時間を割いて話を聞くよりも、事情のよくわかっている、あまり状態が悪くない患者さんをハイペースで診療したほうが効率よく稼げる…、
となると、特に診療報酬と収入が直結している開業の先生なら、「固定客」としての患者さんを定期的に次々診療したくなるのも当然かもしれません。
もちろん、そうじゃない先生もたくさんいらっしゃると思いますが。むしろそう信じたいですが。
あえて治療を終結しないでいるか、治療の舵取りができなくなってしまっているかに拘わらず、治療の目的や方向性をちゃんと示さないままで治療を続けているのは主治医の責任だ! と私は思っています。
さて、私自身は。
今のところずっと勤務医を続けてますし、幸い診療報酬に縛られることもないので、治療の目的がはっきりしなくなってしまっている患者さんの予約で外来枠がびっしり埋め尽くされるよりも、ひとりでも多くの「今の状態を何とかしたい!」と思っている患者さんや新しく治療を始めようと思っておられる患者さんのために自分の限りある外来診療時間を使えたらいいな、と思ってます。
それに、こどもの患者さんの診療のための時間も確保したいですし、ね。
だから、できるだけ治療の目的を明確にして診療するように心掛けてます。
患者さんも、主治医の前で愚痴を言えたりすると、そのときは多少スッキリするかもしれない。
愚痴をいうことにまったく意味がないわけではないかもしれない。
でも、少なくとも私は、愚痴を言うことを目的に自分の外来に通っていただくのはお互いに時間がもったいないと思ってしまいます。
今、自分は何のために精神科に通い続けているんだろう?
どうなれば、どうすれば、治療を「卒業」できるのかな?
もしかしたら、もう精神科に通わなくてもがんばっていけるかな?
そんなことへ意識を向けてくださる患者さんが増えてくれたら嬉しいな、と思います。
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