代々木上原駅近くに止めた千代田線の車両で見つかった落書き=07年1月、東京メトロ提供
代々木上原駅近くに止めた千代田線の車両で見つかった落書き=07年1月、東京メトロ提供
世界各地で愉快犯的に電車などへの落書きを繰り返している集団のメンバーとされるオーストラリア人男性4人が6月、成田空港から国内に入ろうとしたところ、東京入国管理局で上陸を禁じられてそのまま帰国していたことがわかった。集団は昨年1月に東京都内などで電車に落書きした疑いが強く、「公安を害する恐れがある」と判断された。
集団は、豪州の「Master Of Crime」(MOC)と名乗る団体。
警視庁組織犯罪対策2課などによると、豪州捜査当局から6月、「MOCのメンバーが日本に行って落書きする可能性がある」と連絡があった。豪州当局が現地のMOCの拠点を捜索した際、昨年1月に日本の東京メトロの電車に描かれた落書きの写真が見つかったという。
同課や東京メトロによると、昨年1月1日〜14日に5回、千代田線の綾瀬車庫(足立区)や代々木上原駅近くの留置線(渋谷区)、有楽町線の和光車庫(埼玉県和光市)に止めてあった電車が落書きされた。カラースプレーで前面や側面いっぱいに英文字が描かれ、一部には「MOC」の署名が入っていた。
同社は警視庁に器物損壊などで被害届を提出。豪州の捜索で発見されたのはこの被害の一部の写真だった。
今回、MOCのメンバーとみられる男性4人が豪州から成田空港に着いたのは今年6月14日。警察当局や東京入管が事情を聴いたところ、ノズルなど落書き用の道具を持ち、落書き目的で来日したことを認めたという。同入管は、入管法が定める「日本の利益や公安を害する行為を行う恐れがあると認める相当の理由がある」などに当たるとして上陸禁止措置をとった。
4人は「日本は警備が緩く、自国や英国などに比べて標的にしやすい」と入管などに話したという。
4人のうち1人は、昨年1月の一連の落書きに関与した疑いが強いという。メトロの車両の落書きが続いていた時期の昨年1月12日には、MOCのメンバーが滞在していた世田谷区の住宅で、過熱したスプレーが爆発して2人がけがする火災も起きていた。
MOCはインターネットなどでメンバーを集め、自分たちの絵の技量をひけらかすことに主眼を置き、政治性や思想性は低いと警視庁などはみている。
東京新幹線車両センター(東京都北区)では7月1日、上越新幹線の車両側面に「Hack」などと書かれているのが見つかり、運行をとりやめる騒ぎがあった。これについては署名がないことなどからMOCによるものとは違うと同庁はみている。(大谷聡、久松弘樹)