また竹島問題である。今回は、中学の学習指導要領解説書の中に竹島という文言が入ったことで火がついた。
「我が国と韓国の間に竹島をめぐって主張に相違がある」というへっぴり腰の文言なのに、韓国の駐日大使が怒って帰国してしまった。
韓国人は、なぜあれだけ興奮できるのか。なぜ領土だと信じて疑わないのか。それほど韓国文教省の指導要領はすばらしいのか。
「歌だよ」と韓国の知人はいう。「独島(トクト)はわが地」という歌だ。1996年、韓国政府が竹島に接岸施設を作り、日本政府が抗議した。その時、韓国で抗議運動が起き、この歌がヒットした。以来、幼稚園児から老人まで、歌って踊れるみんなの歌になった。
動画共有サイト「ユーチューブ」で聞くことができる。軽快なメロディーだ。出だしは「青い山脈」の前奏部分「チャンチャンチャーン、チャンチャンチャーン」に似ている。
1番は「鬱陵(ウルルン)島の東南、200里。孤独な島一つ。鳥たちの故郷。誰がいくら自分の土地だと言い張っても、独島はわが地」と、領有権主張の総論。
2番は「慶尚北道・鬱陵邑(ゆう)・南面島洞1番地。東経132度。北緯37度」。地理的知識を覚える。
3番は「イカ、タコ、明太(メンタイ)、亀、卵」など特産物の学習。4番は「(新羅の)智証王13年。于山(うさん)国。世宗実録地理誌50ページ3行目」。主張の根拠となる歴史史料である。歌だから、みんな丸暗記してしまうのである。
5番は「日露戦争直後に、所有者のない島だと(日本が)無理に言い張り、本当に困る」。日本が竹島を島根県に編入した閣議決定への反論だ。1番から5番まで、最後のフレーズの「独島はわが地!」で気合を入れる。
それにつけても、日本人は、竹島の緯度経度を言えるか。日本側の歴史史料を知っているか。韓国の主張の誤りを例示できるか。韓国人は、歌って踊れるのである。
「指導要領の解説」などという役人の作文で、韓国の民間芸能パワーには対抗できない。それより、竹島領有権を子どものころから刷り込むなら盆踊り用の音頭かラップを急いで募集したらどうか。それとも文部科学省は、教員採用試験に必ず領土に関する問題を1問入れさせたら。少なくとも子どもに教えられる先生が育つ。韓国政府が問い合わせてきたら「試験問題は教えられない」と、お断りすればいい。(専門編集委員)
毎日新聞 2008年7月24日 東京夕刊
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