最終更新時刻:2008年7月24日(木) 14時54分

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「WaiWai」「あるある」から見るメディア論

公開日時:
2008/07/22 02:35
著者:
mugendai

メディアは過去を隠したがる。

 

 「WaiWai」は既に閉鎖しておりますが、過去の記事を転載しているサイトなどが判明すれば、事情を説明し、訂正や削除の要請を続けていきたいと思います。(再発防止へ体制強化 深刻な失態 教訓にします)

 再発防止へ体制強化 深刻な失態 教訓にしますというタイトルながら、訂正や削除の要請を続けていきたいとするのはなぜか。過去の恥をいつまでもさらしたくないという気持ちはわかる。しかし、本当に反省の気持ちがあるのなら、事実を事実として残すべきではないのか。

 同じように、新聞社系のニュースサイトが新しい記事が無料で見られて、古い記事が数日で有料になるのは、新聞購入者は金を出すいいカモだと言っているようなものだ。なぜなら、新聞が好きな人間ほど、過去の記事を読みたがるものだからである。新聞は、何百年も歴史があり、そのアーカイブで生きていたのではないか。そのアーカイブこそ、知識の泉として放出すべきである。

 ぼくは、「コンテナーからコンテンツを取り戻せ」で、こんな言葉を紹介した。

 新聞協会発行の雑誌『PRESSTIME』は、こんな社説を掲げている。
新聞社の電子版の広告は爆発的に伸びる。だから電子新聞に掲載する情報は出し惜しみするな。サイトに壁を作るな。そんなことをすると、検索エンジン経由でせっかくアクセスしてきた読者に悪い印象を与え、広告集めにマイナスの材料を自ら作ることになる。タダで閲読しているからといって「電子版」の読者を馬鹿にしてはいけない。「紙」「電子」にかかわらず読者は本来利口で熱心で協力的なのだ。コミュニティーのニュースや写真を提供してもらい、電子新聞の内容をもっとコミュニティー密着型にして新規の閲読者を獲得せよ。(「サイバージャーナリズム論」第一章 新聞ビジネス崩壊の予兆/歌川令三著

メディアは人を育てない。

 

人を育てるのは人である。テレビ局や新聞社に入った瞬間にジャーナリストになるわけではない。ところが、このような事件が再発するのは、人を育てるシステムが崩壊しているというしかない。今回の事件の本質は、担当記者もチェックする人間もジャーナリストとしての資質に欠けていたのである。ジャーナリズムとは、個人が真実を知りたい、伝えたいと思うことから発せられるべきだからだ。
報道のWikipediaの中で、英国版として

ジャーナリズムとは、散在している事物や人について現在起こっている出来事、流れ(トレンド)の情報を集め、検証し、レポートし、分析する技能・訓練のことである。それらの技能を有している者・それらの作業を行っている者を、ジャーナリストと呼ぶ。

と定義されている。現在は、報道機関(≒マスメディア)に属している人が多いのも事実だが、本来は個人の資質による差が大きい。ところが、新聞やテレビというブランドが、イメージを作り、所属しただけでジャーナリストになったと誤解しているのだ。ジャーナリストになるには、当然なりやすいマスメディアという環境は必要だが、ジャーナリストの資質を持った先輩に育てられて成長していくのである。

メディアは権力である。

 

権力者というのは他の権力者を恐れる。ぼくは、「テレビは視聴者を信じない」でこんなことを書いた。

 関西テレビの千草社長が、「あるある大事典」について総務省に報告書を持って行った行動に失望したことがある。おそらくメディアに弱みを握られまいとしたのだろう。顔面蒼白のままその内容については一切語らなかった。僕は「この社長もか」と思ったのだ。
 僕は、ほんの2年前、「メディアの自殺」と題して書いたことがある。例のホリエモンがニッポン放送を買収しようとした事件のときだ。フジテレビがテレビの「公共性」を説いたことがあった。だが彼らに「公共性」をかたる資格があったのだろうか。本当に「公共性」があったのなら視聴者から怒りの声が出てくるはずだ。「あんたが言うなよ」という気分だった。
(中略)
 メディアの自殺と題したのはわけがある。一つは、その放送局が「公共」的であるのかどうかを判断するのはあくまでも視聴者であり、自ら主張すべきではないことと、せっかくのチャンスであるこのときに、視聴者を巻き込んだ番組を作ることができるのに、何もしていないことだ。これでは視聴者はなんとつまらない放送局だと思うのは当たり前である。もちろん、それどころではないというだろうが、外野から見ればどうしても守勢に回されるメディアのふがいなさに目が行ってしまうのだ。
 関西テレビの千草社長の目はすでに政府のほうを向いていた。決して視聴者に向き合うことはなかった。

 テレビ局の権力者は、結局、視聴者の怒りよりも、「放送免許」の喪失を恐れたのだった。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。

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