北京五輪開催まで2週間余りになった。新型水着や大気汚染が競技の結果にどう影響するのかという点も繰り返し報道され、事前にこれほど話題を盛り上げた五輪も少ない。しかし、早くも北京五輪後の中国経済の失速を心配する声もある。
開催に向けた突貫工事は今も続いている。強烈な建設需要が高成長を底上げしてきたが、五輪が終わればこれらはなくなる。東京五輪後に建設ブームが去った日本経済が金融危機寸前に陥り日銀特融が発動された40年以上前の記憶がよみがえるのだろう。
また、北京五輪とは関係ないが、サブプライム、原油高など国外には逆風が吹いており、国内にも金融・信用問題のマグマもたまっている。そう考えると、わずかな減速も連鎖的な急ブレーキに発展するのではないか、との懸念も当然かも知れない。だが問題は事態が危機的になるか否かである。
現在の中国では、一国内に途上国と中進国と先進国が同居したような多層的、多発的な地域経済発展が大規模に進行している。沿海諸都市の発展が中国経済を牽引(けんいん)していることは確かだが、あまり知らないような多数の内陸中規模都市の開発、発展も目覚ましく、そのような多数の都市も間違いなく牽引車なのである。そうなると仮に北京五輪後に北京市周辺でブレーキが踏まれようとも、これらの地方都市は自立的な発展を継続しブレーキの連鎖が生じない可能性は高い。中国全土としては失速や危機は回避され、成長さえ維持できる。
しかも、良否はともかく政治体制の違いにより中国政府の実行能力は高い。彼らが必要と思えば資本移動、為替に手を打つことで、危機の回避を進めるだろう。(龍)