岡山市教委は22日、「利性院五鈷(杵)」の市指定文化財の指定解除を了承した。これで同市の文化財は91件となったが、紛失という前代未聞の原因。普段は厳重に管理されていたものの、ちょっとした不運な出来事が積み重なった結果だった。 「利性院五鈷(杵)」は、鎌倉時代に作られたと推定される密教仏具の五鈷杵(ごこしょ)。青銅製で、全長17センチ。中央に4個の鬼目を配し、両側に八葉蓮華の文を施し、両端のカーブが力強く、簡素ながらも造形美を見せている。 利性院(岡山市西大寺中野、江村一光住職)の所蔵。この時代のものが地方に残っているのは珍しく、1972年12月21日に工芸品で市指定文化財に指定された。 07年4月末、利性院が道路拡幅に伴い現在地へ移転した際に紛失。通常は金庫に保管していたが、引っ越し準備のため、深夜に黒い木箱に移し変え、傷つかないようタオルで覆ったという。 紛失に気付いたのは引っ越しから約1カ月後で、いろんな所を探したが、見つからなかった。 同11月ごろ、市教委に相談し、その後も行方を探した。誤ってごみとして処分した可能性もあり、東部クリーンセンターまで探したが見つからず「万策尽きた」として、指定解除の手続きに入った。 7月2日には、市文化財保護審議会(会長・真壁葭子倉敷考古館学芸員)にかけられ「出てきたらもう一度指定する」ことを条件に、指定解除が了承されていた。 市指定文化財で、天然記念物の樹木が枯れたり、所有者が市外に転居して解除された例はあるが、紛失が原因となったのは「記憶にない」(文化財課) 江村住職(66)は「いろいろ悪いことが重なり紛失した。故意では決してないが、私がすべて悪い」と話している。