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【社説】

財政再建 公約はきちんと守れ

2008年7月24日

 二〇一一年度の基礎的財政収支(プライマリーバランス)黒字化という政府の目標が一段と厳しくなった。とはいえ、ここで財政再建の旗を降ろしてはならない。無駄と非効率の排除が最優先だ。

 内閣府が経済財政諮問会議に提出した試算によると、一一年度に名目成長率3%を達成し、五年間で一四・三兆円という最大限の歳出削減をした場合でも、国と地方の基礎的財政収支は三・九兆円の赤字になる。

 歳出削減幅が一一・四兆円にとどまった場合には、赤字は六兆円に拡大する。名目成長率が1・4%程度に伸び悩んだ場合には、さらに赤字幅は大きくなる。

 ことし一月時点の見通しでは、高成長と最大の歳出削減の場合でも赤字は〇・七兆円と見積もっていた。赤字幅が拡大したのは、景気減速で税収が大きく落ち込む見通しになったためだ。内閣府が同時に発表した〇八年度の名目成長率は0・3%と、一月時点の見通しを大幅に下方修正した。

 数字をみれば、財政再建が一段と難しい局面にさしかかったのは間違いなさそうだ。米国の住宅ローン問題が深刻化するなど、経済環境も厳しさを増している。

 だからといって、ここで断念するわけにはいかない。一一年度の基礎的財政収支黒字化は「国際公約」といっていい。政府が目標を先送りするような姿勢をみせれば、金融市場は日本国債売りで対応し、長期金利が急騰しかねない。なにより、福田康夫政権に対する信認が問われる。

 肝心なのは、まず歳出の無駄と非効率を徹底的に排除していくことだ。政府予算の概算要求基準(シーリング)策定作業が進んでいるが、真に必要な予算とそうでない部分に思い切っためりはりをつけねばならない。

 道路や雇用関連事業では、特別会計から支出したカネに大きな無駄が隠れていたことも再三、指摘された。省庁の既得権益化した縦割り予算には、徹底してメスを入れていくべきだ。

 税収の落ち込みは財政再建のために経済成長の重要さをあらためて示している。だが、成長力強化に対する政府の取り組みは不十分といわざるをえない。

 内閣府が先に発表した年次経済財政報告(経済財政白書)は、家計に積極的なリスクをとるように求めているが、世界的な金融不安が広がる中、家計に投資を呼び掛けてもむなしく響く。政府自身のリストラこそ最優先である。

 

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