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【主張】「橋下予算」成立 財政再建のモデルになる
橋下徹大阪府知事による抜本的な財政改革方針を受けた平成20年度の本格予算が成立した。
借金約5兆円を抱える大阪府には財政破綻(はたん)の危機が迫る。そうした事態を避けるため、知事は今年度で1100億円、28年度までに7700億円の収支改善を打ち出した。今回の予算はその第一歩だ。
地方自治体の多くは赤字財政に苦しみながら、「総論賛成・各論反対」の壁を崩せていない。府の挑戦は、全国のこうした自治体のモデルになりうるものである。
最初に示された財政再建試案は生活に直結する行政サービスや市町村補助金に切り込み、府民、市町村長らを巻き込む議論を引き起こした。その後の「『大阪維新』プログラム」では退職手当債発行に踏み切り、今回は府議会の求めに応じるかたちで、人件費と私学助成の削減幅を圧縮した。
じりじり後退しているようにもみえるが、「今年度の収支改善1100億円」はほぼ達成した。税収の大幅な落ち込み、労組の猛反発や府議会での改革批判の中で、削減圧縮を小幅に抑え、赤字額を50億円にとどめた。
これらは知事が「収入の範囲内での予算編成」にこだわり続けた成果であり、粘り腰を見せた、といってもよい。
その背景には、改革への府民の強い支持があった。議論を公開し、短期間で方向性を示す知事のスピード感に満ちた手法が、府民の関心を高めているのである。
一方で、知事は予算修正のさい、議会の意向を尊重する姿勢を強調し、議会との全面対決を避けている。これは今後の改革を進める上でプラスとなるはずだ。
改革は緒に就いたばかりだ。議員報酬と政務調査費の15%削減を決めた府議会も、思い切った定数削減に踏み込む必要がある。
同時に、府の努力だけによる収支改善の限界も見えた。国の直轄事業負担金など自治体に裁量余地のない支出は多い。さらなる税源移譲も不可欠だ。これらの制度見直しに向け、霞が関の厚い壁に穴をあけねば、展望は開けない。
今や全国が大阪府を注視している。府、議会、府民が痛みにひるまず、一丸となって実を挙げていけば、国民的な支持が得られ、霞が関との対峙(たいじ)も可能になろう。
橋下知事にはその先頭に立ち、スピード感に満ちた改革を継続してもらいたい。