「『(看み)取り』をしたのであって、命を止める処置はしていない」。末期患者7人の人工呼吸器を取り外して死亡させたとして23日、殺人容疑で富山地検に書類送検された射水市民病院(富山県射水市)の元外科部長、伊藤雅之医師(52)。同日を含め今年に入って計5回、毎日新聞の取材に応じ「延命治療の中止は犯罪ではない」と繰り返した。
「殺人には当たらない」と強調する一方、「うやむやにされては患者さんが浮かばれない。(裁判で)堂々と主張を述べたい気持ちもある」とも語った伊藤医師。7人中6人について自ら呼吸器を取り外したと認め、「全員が回復不能で家族の同意もあった。人生の最期で院内孤独死のようなことはさせたくなかった」と主張した。本人の同意書はなかったが、「患者さんとの付き合いは長く、信頼関係は紙ぺらでは計れない」と述べていた。
伊藤医師は岐阜大医学部卒で、専門は消化器外科。金沢大付属病院などを経て95年から新湊市民病院(現・射水市民病院)で勤務した。現在は同県高岡市の民間病院に勤める。
射水市民病院では週末も出勤、深夜でも病院に駆け付けた。患者や同僚は「仕事熱心で患者思い」「赤ひげみたい」と評し、特にお年寄りに慕われた。患者の最期を家族と共に看取り、葬儀にもほとんど参列していたという。
半面、「ワンマン」「独善的だった」と批判する関係者もいる。かつての同僚医師は「脳死状態かどうかも1人で判断していた。当時の外科は事実上のトップダウンでチーム医療は名目上だけ。地検がそれをどう判断するか……」と漏らした。
毎日新聞 2008年7月23日 22時38分(最終更新 7月23日 22時43分)