台風7号崩れの低気圧の影響で、室蘭地方は23日、記録的大雨に見舞われた。室蘭の降水量は128・0ミリ(午前9時)にのぼり7月の過去最高を記録。冠水や土砂崩れが多発した。室蘭市はチマイベツ浄水場の運転を停止した。交通網がまひし通勤の足に大きな影響が出た。
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室蘭地方気象台によると、降り始めは22日午後11時。午前9時現在の各地の雨量は、室蘭が最多で128・0ミリ。登別99・5ミリ、むかわ79・0ミリ、白老65・5ミリ、白老森野60・0ミリ、登別カルルス55・0ミリ、伊達30・0ミリなど。
室蘭の雨量は昭和21年7月22日の125・1ミリを抜き過去最高を記録。1時間降水量も46・0ミリ(午前零時10分−同1時10分)で過去2番目。年間ベースでは、降水量は5位、1時間降水量は4位となった。
同気象台によると、同日午前には低気圧が東へ移動し、胆振管内の強い雨は午前中いっぱで収まる見通しという。 (鞠子理人)
◆――― 土砂崩れ線路覆う、市内で4件
室蘭市がまとめた23日午前9時現在の被害状況によると、同日午前零時以降に市内で発生した被害は30件。道路や飲食店、車庫への浸水・冠水は11件。このうち輪西町2・7・5周辺の広い範囲で道路が浸水し、通行止めになっているという。また、中島町1丁目周辺でも未明に1時通行止めになる被害があった。
土砂崩れは4件発生し、幌萌町で2カ所、絵鞆町、大沢町でそれぞれ1カ所。幌萌町の2カ所はいずれもJRの線路に土砂が覆い被さり、運行に影響が出ているという。道路の陥没は2件。緑町9・18では幅3メートル、長さ10メートルの範囲で道路が陥没しており、通行止めになる可能性があるという。深さについては調査中。
このほか、屋根の雨漏りやマンホールから泥水がもれるなどの被害が6件あった。市や消防などが土のうを積むなどして対応しており、今後の天候にも注意を呼び掛けている。
室蘭署によると、午前7時ごろ、幌萌町の民家4戸が土砂崩れに伴う自主避難を検討したという。登別市によると、美園町の民家で床上浸水の被害が1件発生し、若山、新生、若草、緑、登別東、幸の6町で道路が冠水し、通行規制が実施された。柏木、千歳の2町では、道路のり面が崩れる被害が出たが、午前10時ごろに復旧した。 (石川昌希、粟田純樹)
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登別市のまとめによると、美園町で床上浸水が1件発生。鷲別町や若草町、緑町、登別東町などでは床下浸水があり、件数は確認中。柏木町では小規模な土砂流出があったが、被害はなかった。
市道や道道の冠水も市内各所で発生。午前3時すぎには市道若山13号線で、冠水のため自動車1台が立ち往生したが、消防職員が対応した。
登別市教委によると、市内の小中学校13校では通常の登校を行った。 (有田太一郎)
◆――― 輪西冠水、大渋滞
室蘭市内では、輪西町の道道を中心に冠水で通行が困難になったために一時、通行止めの措置が取られた。ちょうど出勤時間帯に当たっていたため、迂回させられた通勤車両が幹線道路の国道36号などに集中し大渋滞になった。
輪西町の道道では雨水があふれ出し、輪西駅前を中心に道路一面が深さ20、30センチの大きな池状態になり、数カ所で車が立ち往生した。午前8時ごろから室蘭方面に向かう路線で通行止め措置が取られ、間もなく逆方面の路線も通行止めとなり、輪西町一帯が一時、陸の孤島のようになった。行き交う車も減速しながら恐る恐る走行していた。
道南バスは市内の各路線や札幌行きの都市間バスなど、すべての路線で通行止めなどの影響を受けて、20分から30分の遅れが出たという。路線の運休などはなかった。 (鈴木利勝、粟田純樹)
●JR室蘭線
JR室蘭線では、同日午前2時40分ごろ、東室蘭―本輪西駅間で、約600メートルにわたり線路が冠水したほか、御崎駅構内でも冠水が発生。本輪西―崎守駅間では、約30メートルにわたり土砂が流入した。
この影響で室蘭線では、長万部―苫小牧間の上下線、東室蘭―室蘭間の上下線で運転を見合わせているほか、JR日高線でも鵡川―静内間で運転見合わせていたが、午後11時半すぎに一部で復旧した。
JR北海道によると、午前9時30分函館発札幌行き特急北斗5号など、特急9本を含む37本の運休を決めたほか、大阪、上野発(22日)の札幌行き寝台特急3本に遅れが出た。乗客は代替バスで目的地に向かった。 (菅原啓)
●停電
北電室蘭支店によると、23日午前零時40分ごろから、室蘭市西小路町や緑町、増市町の140世帯で、完全に停電した。落雷の影響とみられ、約1時間後に復旧した。
また、白老町内の送電線が、大雨や落雷の影響を受けたため、同市内への企業などの大口配電先でも、同日午前1時42分ごろから数分間にわたって停電した。同市内の送電施設などの影響は無かった。 (松岡秀宜)
●大手企業
室蘭市内の大手企業は北電の送電が一時ストップしたが、自家発電などでしのぎ、操業への大きな支障、事故などはなかった。
新日本製鉄室蘭製鉄所は、停電のあった午前1時半ごろから自家発電装置で対応。構内で小さな冠水は若干あるが、生産面での大きな支障はないという。
日本製鋼所室蘭製作所は午前1時半ごろと3時40分ごろにそれぞれ一時的な停電に見舞われ、生産工程の一部にやや遅れが生じた。冠水被害が出ているが、大きな支障はないという。
新日本石油精製室蘭製油所は停電になった午前1時半ごろから2時間ほど自家発電装置で対応。この間、原油処理能力を若干落としたが、その後は通常通りの操業に戻した。ただJRストップで、ガソリンなどを輸送するタンク列車は止まっている。 (山田晃司)
●小・中学校
室蘭市内の小・中学校には施設関係の被害はなく平常通り、授業を開始した。一方、高校はJRが不通となったため、各校1―3割の生徒が列車が動くまで駅や自宅での待機となっている。
比較的列車通学の多い室蘭栄高校では250人前後、室蘭東翔高校で100人前後、列車の利用が少ない室蘭清水丘高校でも57人が足留めされた。 (佐藤重理、佐藤重伸)
【写真=線路に流れ出た土砂を撤去する作業員=午前9時ごろ、幌萌町JR室蘭線(上)、冠水で一面が池のような状態になった輪西駅前の道道を走る車両=23日午前8時17分、輪西駅前の道道(下)】
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