ホーム > きょうの社説


2008年7月24日

◎七ツ島の調査 「海鳥の楽園」にどんな変化が

 本社の舳倉島・七ツ島自然環境調査団が調査を開始した七ツ島は、舳倉島と違って無人 の島であり、「海鳥の楽園」とも形容される日本海有数の海鳥の集団繁殖地である。人間活動の及ばない絶海の孤島は、私たちが気づかないような、わずかな環境変化をつかむには最適の観測地点といえるだろう。

 本社と金大が調査した四十八年前と比べて島の何が変わり、変わっていないのか。舳倉 島とは異なる環境変化が生じているのか。石川県民もほとんど足を踏み入れたことのない島だが、そこから得られるデータは紛れもなく、ふるさとの自然が発する貴重なメッセージである。いま起きている環境問題を考えるヒントにしたい。

 輪島市と舳倉島の中間にある七ツ島は大小七つの島から成り、本社と金大の自然科学調 査団をはじめ、県、環境省の調査が進められてきた。七ツ島の一つ、大島で生息、繁殖するオオミズナギドリは一九八三年の県の調査では三万五千―四万羽と推定され、まさに島全体が巣といってよい。絶滅危惧種のカンムリウミスズメの保護を目的に鳥獣保護区域にも指定され、「海鳥の楽園」は今なお不思議のベールに包まれている。

 本社の自然環境調査団は、大島に第一陣が渡った。野鳥の個体数や漁業資源、飛来物、 動植物調査などを実施する。過去には人が放したカイウサギが異常繁殖し、生態系のバランスが変化した。その後の状況把握も調査の大きなポイントである。

 舳倉島では、同じ日に金沢や小松では確認されなかった酸性雨が観測され、島の北西側 に目立つマツ枯れと併せ、中国大陸からの越境大気汚染をうかがわせた。約千五百万年前の樹木化石「珪化木(けいかぼく)」なども見つかり、わずかの調査期間で大きな収穫が得られた。

 七ツ島でも早速、岩場でメノウや水晶などの鉱物が多数確認された。小さな島ながら、 その自然環境は多種多様で、七ツ島だからこそ見えてくるものがあるはずだ。一つ一つの発見は島だけで完結せず、石川、さらには日本列島、地球規模の問題を考える糸口を与えてくれるかもしれない。

◎環境モデル都市 省エネ技術開発も怠らず

 温室効果ガスの大幅削減に取り組む「環境モデル都市」に北陸から富山市が選定された 。政府の地域活性化統合本部が選んだもので、いずれも二〇一〇年比で二〇五〇年までに二酸化炭素を50%以上削減する目標を設定している。全国では富山市のほか、横浜市、北九州市、北海道帯広市、同下川町、熊本県水俣市の六市町である。

 こうした「エコのまち」を育てることは地球温暖化にブレーキをかける上で大事だ。追 加選定もあるが、省エネや新エネルギー開発もなおざりにできない。

 富山市の場合、JR富山港線を受け継ぎ、新しい路面電車としての可能性を切り開いた ことに加え、都心の再開発、富山駅につながる高山線での増発実験を通して公共交通機関の利用増を探り、同時に公共交通機関沿線の住民を増やす計画に乗り出したことが高く評価されたといわれる。

 同市はそうした試みを「公共交通の活性化によるコンパクトなまちづくり」として推し 進めている。思い切った手を打つことの背景に、同市の二酸化炭素の排出量が全国平均の約二倍という環境悪化もある事実を無視できない。

 数多くの企業が立地し、マイカーへの依存が高いからだ。

 ベンチャー企業なども多い企業のまちであることも忘れず、得意技の製薬基盤技術にプ ラスして省エネや新エネルギーの開発も進めてもらいたいものである。

 さらにいえば、削減の成果をあげるためには生活の質を落とさず、科学技術を進展させ るしかないのである。

 環境モデル都市には複数の自治体による共同提案などを含めて八十二件の応募があった といわれる。政府が財政面で支援することが魅力となって多数の応募があったのだろう。

 が、地域にはそれぞれに特徴豊かな生い立ちがあり、路面電車を走らせることができな いまちも少なくないのである。いろんな可能性を組み合わせたビジョンを育てる責任が政府にある。温室効果ガス削減は科学技術を軸に多面的に進めるのが効果的である。


ホームへ