「マスコミたらい回し」とは? (その78) ABC「悲鳴病棟 “医者を訴える”夫の決断」@5/29の謎→加筆・訂正あり→画像は削除しました
この5月29日にABCが深夜に放映した
悲鳴病棟“医者を訴える”夫の決断
なのだが、実に不思議な場面がある。
■脳内出血で瀕死の状態の産婦さんに夫君が泣きながらすがるシーン=画像1(「奏太、お母さんてよんだってー」→撮影者キャプションなし 産婦さんは浴衣に着替えさせられている。脳内出血の開頭手術前か)
が、結構な尺で入っているのだ。
その前に
■陣痛に苦しむ産婦さんの姿=画像2(「晋輔さん撮影」のキャプション入り)
が映っている。こちらには、ご家族が撮影したというキャプションが入っている。
更に、
■大淀病院で陣痛促進剤の投与を受けたことを示すカルテの映像=画像3(大淀病院でのカルテ 内服指示とその量が明記されている 撮影者キャプションなし)
も、結構な尺で映される。
■大淀病院で陣痛促進剤の投与を受けたことを示すカルテの映像=画像4(大淀病院でのカルテ 陣痛促進剤(PGE2)内服指示とその量が明記されている 撮影者キャプションなし)
カルテが映し出されるこのシーンのナレーション
「主治医は出産予定日を過ぎていた実香さんに陣痛促進剤を投与し、徐々に強い痛みを訴えだした」
この台詞から、ABCの制作班も「陣痛促進剤で殺された」という「陣痛促進剤による被害を考える会」の主張に基づき、この番組を制作していることが分かる。
大淀病院の陣痛室と思われるところのシーンは「晋輔さん撮影」というキャプションが付いていた。ところが、
■瀕死の状態の産婦さんにご遺族が泣きながら声をかけるシーン=画像5→撮影者キャプションなし 開頭手術後、手術着を着せられている産婦さんの手を夫君が執って、赤ちゃんをなでさせようとしているシーン。クリーム色の手術着のままなので、開頭手術からそれほど経ってないと思われる
■画像6=夫君「どうやって育てるのー」 →撮影者キャプションなし ぼかしがはいっているからわかりにくいが、産婦さんがキャップを被せられ、クリーム色の手術着を着せられているので、開頭手術直後だと思われる。赤ちゃんも産着に着替えている
には、キャプションがない。特にキャプションがないということは、普通は
プロが撮影したシーン
という扱いになるはずだ。
■画像7=(午前8時4分 奏太ちゃん誕生)→このシーンにも撮影者キャプションがない。救急搬送されたご家族には、カメラを回す余裕があったとは考えにくいのだが。誰が撮影したのか。
一体、誰があのシーンを撮影したのか。
瀕死の家族にすがる様子を長回しして後で編集したとしか思えないのだ。長回しも並大抵の尺ではないと思う。
上の画像をもう一度確認していただきたいのだが
1. 大淀病院での陣痛室での様子(夫君が撮影のキャプションあり 8/7深夜)。産婦さんは青い色のマタニティドレスを着ている。
2. 国循搬送後、帝王切開の後。産婦さんは浴衣に着替えている。
3. 帝王切開後、脳内出血の開頭手術の後。産婦さんは手術着に着替え、開頭後なのでキャップを被せられている。赤ちゃんは産着に着替えている。
の3つのシーン全部の経過時間はおそらく12時間近くあるのではないだろうか。時間が入っているのは
赤ちゃんの誕生時間 午前8時4分
だけだが、帝王切開の後、開頭手術にとりかかったとして、麻酔→剃毛と開頭→手術の経過時間を考えると、少なくとも3-4時間は要するのではないのか。分娩後、一度、ベッドに戻されているから、その間に脳外科の手術の準備をしていたと思われる。2の撮影の後、病室で浴衣から脳外科手術用の手術着に着替えさせられて、ストレッチャーで手術室に運ばれていった筈だ。
民生用の機器でも、長時間撮影は出来るかも知れないが、素人が撮ると、その前に撮影者が参ってしまう。プロが撮ったのではないか、そうでなかったら
ある意図をもって撮影された「証拠ビデオ」
ではないか、という疑念が晴れない。それほど
瀕死の産婦さんを抱えている家族の「家族ビデオ」としたらあまりにも不自然
なのである。
陣痛に苦しむ産婦さんを撮影するのも、家族の行動としてはかなり異例ではあるのだが(わたしが産婦だったら、カメラを回すよりも、そばにいて励ますなり、手を握るなりしてもらった方がよい)
瀕死の家族を長回しで撮る
のは、もっと異例だ。しかも、カメラはプロが撮ったように、ぶれてないのである。もし、自分の家族が瀕死だったら、動揺して、固定カメラで撮るのも難しいのではないか。
特に、上に載せた
赤ちゃんをなでさせるシーン
なのだが、ちゃんとカメラが寄っていて、動いているご夫婦の手を、ぶれずに撮影している。かなり足場が悪い筈の、狭い病室での撮影だと思われるので、カメラを回した人物は素人とは思えない。
これが謎だった。
なぜ、あのシーンが残っているのか。
Yosyan先生のところに寄せられた情報、
救急搬送時に毎日新聞の記者がいた(訂正 6/27 00:10→「記者」がいたことは確かだがどの社かは不明だそうですので、訂正します)
というのが本当なら、答えは簡単である。国循に搬送されて、手術を受けた後に
撮影許可をもらって、カメラを回していたクルーがいた
ということになる。ただ、ABCと毎日新聞とは、直接関係があるわけではないので、どうして第一報を書いた毎日系列のMBSでなく、朝日新聞系列のABCがそんな映像を入手しているのかが謎だ。
(追記 6/27 0:11)
もし、国循にいたクルーと、待ち受けていた記者が同系列だったら? つまり、国循にいた記者は朝日新聞か朝日放送の記者だったら?
そう考えると、問題は解消するが、まだ「記者の所属」について情報を得ていない。
その場合、記者が先回りしていたと考えるよりも、国循に別な取材で入っていたところに、たまたま搬送されてきた患者さんを撮影したら「大淀病院産婦死亡事例」の産婦さんだったと考える方が自然かも知れない。
(追記おわり)
もう一つ、この番組には、
医療従事者のネットm3.comにカルテが流出していることをご遺族に誰が知らせたか
わかるシーンがある。m3.comは原則として医師でなければアクセスできないシステムになっていた。
番組ではm3.comには接続してないのだが
2ちゃんねるのニュース速報+板の「大淀病院産婦死亡事例」ニュースの書き込み
を、取材ディレクターがご遺族に示しているシーンが入っている。要するに
ネット関係の入れ知恵は、ABCのディレクターが行った
ということだ。m3.comの書き込みについて、ご遺族の義父の方は
ある人に教えてもらいました
と、取材にこたえていたが、それは、長期間にわたって、三郷町の義父の方の家で
■画像8=(奈良県三郷町)→生駒山が見えており、地形を見る限り、三郷町東部の新興住宅地域を南側から北側に向かって撮影していると思われる
■画像9=(続くシーン。ご遺族が家に帰ってきたところ)
張り付き取材をしていたABCクルーにほぼ間違いない。
2ちゃんねるの書き込みを見せるシーンでも、おそらく撮影クルーの誰かだろう、手慣れた様子で、該当するスレッドにたどり着いていた。2ちゃんねるのニュース速報+板には、数百のスレッドがあり、しかも簡単にdat落ちするから、該当スレッドにたどり着くためには、bookmarkするか専用ブラウザを使ってないと、そう簡単には事は運ばない。
ついでにいうと、ネット掲示板では毀誉褒貶罵詈讒謗なんでも書かれているから、普通、当事者は自分の関わるスレッドを読むことはしないのである。つまり、ABCのスタッフのしたことは
傷口にわざわざ塩を塗り込む行為
である。
「情報提供」を装って、ご遺族に不要な精神的苦痛を与えた、悪辣な行為
といえる。実際に、掲示板の書き込みの「中傷」に当たる部分(2ちゃんねるでは、どんなに落ち度のない犯罪被害者に対してでも、必ず「煽り」としてひどい中傷が書き込まれたり、もっと手の込んだやり方では「ひどい中傷」を装った「縦読み」が仕込んであったりする)を拡大して写し
■画像10=(「名無しさん@七周年 2006年12月23日(土)」の文字が見える)
ご遺族がショックを受けている様子を
■画像11=(2ちゃんねるの書き込みを見て、ショックを受けているご遺族のアップ)
撮影していた。
これが
ご遺族をバックアップする「筈」のドキュメンタリー制作現場で、平気でご遺族を傷つけて「傷ついた表情」を撮る「仕込み」
でなかったら、何だ? ABC。
制作スタッフは以下の通り。
撮影 中野祐二
編責 年清春那
編集 山本亮
編集技術 岡田勉
SE 前田陽一
MA 山川暢之
ディレクター 半田俊介
プロデューサー 矢島大介
統括 枝格
なお統括の枝格(えだ・とおる)氏は、この番組放映以前の5月14日に癌で亡くなっている。
http://www.takarabe-hrj.co.jp/070517.htm
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コメント
ここで、「www.asahi.com」のドメインを使用し、m3から「天漢日乗」にアクセスした人間がいる・・・と言う事実が意味を持ってきますね。
投稿 Nebula202 | 2007-06-26 16:27
>「主治医は出産予定日を過ぎていた実香さんに陣痛促進剤を投与し、徐々に強い痛みを訴えだした」
素人考えですが、予定日過ぎて放置すると徐々に危険が危なくなるような気がするのですが。(その危険とのバランスで陣痛促進剤(←名前が何ともだが、要は出産促進剤でそ?)を与えるかどうか決めていそうな気がするわけですが、そのへんどうなのでしょうか。>専門家の皆様
投稿 BUNTEN | 2007-06-27 08:12
この遺族は、m3.comと2chの区別はついているのでしょうか?
2chの遺族非難メッセージを見て、m3.comには「中傷があふれている」などと発言した可能性はないのでしょうか?
投稿 完全義体 | 2007-06-27 13:31
BUNTENさま、その通りです。
周産期死亡率はだいたい38〜40週が最低で、その後は上がります。(38週未満も上がりますが)なので通常40週過ぎて陣痛がないと、ぼつぼつ誘発を考えます。(羊水量が少ないとか、胎児の元気がなんだかよくないとかあると、もっと早い時期でも帝王切開も含めて考えます)
従って陣痛促進剤を使うことはこの場合胎児死亡や新生児死亡を避けるために普通のことです。陣痛促進剤を決して使うなと言われたら、死亡率は確実に上がります。
また被害者の会が絶対言わないことですが、促進剤を使って陣痛がうまくつかないことも日常茶飯事です。体に準備ができていなければ効果がないのです。
投稿 山口(産婦人科) | 2007-06-27 16:41