富山県の射水市民病院で末期がんの入院患者ら7人の人工呼吸器が外されて死亡した問題で、県警は23日、外科部長だった伊藤雅之医師(52)と、外科第二部長だった医師(47)を殺人容疑で富山地検に書類送検した。
対象になったのは00年9月〜05年10月に死亡した50〜90歳代の男女7人。うち6人の主治医が伊藤医師、1人が元第二部長だった。送検の理由について県警は「心停止前に呼吸器を外せば、患者が死亡することは分かっていた。現行の法体系では殺人罪に問わざるを得ない」と話した。
ただ、遺族の処罰感情が薄く、延命治療中止に明確なルールがないことから、県警は書類送検するにあたり、会見で「厳重な処罰は求めるものではない」とも述べた。こうした状況を踏まえ、刑事責任の有無を地検が判断する。
調べに対し、2人は呼吸器の取り外しを認めている。その上で伊藤医師は「延命治療の中止だった」などと説明。元第二部長は「安楽死や尊厳死にあたるものではない」と話し、脳死判定などはしていないという。
県警は、病院関係者の事情聴取やカルテなどから、亡くなった患者の状態について、専門家に鑑定を依頼していた。また、延命治療中止が認められる要件として、95年に東海大学安楽死事件で横浜地裁判決が示した(1)回復の見込みがなく、死が避けられない末期状態(2)患者の意思表示か、家族から患者の意思が推定できる(3)治療中止による死期への影響を考慮し、医学的に無意味と判断される、の3要件や、厚生労働省、日本医師会のガイドラインなども参考に捜査していた。
事件発覚後、一連の行為について自らマスコミに説明してきた伊藤医師は、この日、「人の道に従って医者として、どうあるべきかを考えて選んだ行為。(呼吸器を外すことが)一番いい方法であれば、やるべきで、やった以上は責任を負わなければならないと思う」と話した。
射水市民病院の麻野井英次院長は「2人には倫理面で、問題があった」などと話した。