無関係の人を狙った無差別の殺傷事件がなぜ、繰り返されるのか。
警察庁の集計では、自由に通行できる場所で明確な動機なしに、不特定の人を殺傷する「通り魔事件」は、今年に入ってから6月末までに東京・秋葉原での無差別殺傷を含めて5件(2件は未遂)起きており、昨年も8件あった。
社会評論家の芹沢俊介氏は今回の事件の発生を聞き、秋葉原事件の被告がインターネットに書き込んだ「孤独だと、無差別に殺す」という言葉を思い起こした。
芹沢氏は菅野容疑者についても「仕事での孤立感と、『この人に支えられて、自分が立っている』と思える相手を見つけられない孤独感が重なり、一気に崩壊してしまったのではないか」と指摘。「危うい時に自分を支えてくれる人がいることは大切だが、現代人は家族の中ですら、それが見つけにくくなっている。こうした事件を防ぐためには、乳幼児期の親子の関係作りなどを支援していくことくらいしかないのではないか」と話す。
長谷川博一・東海学院大教授(臨床心理学)は、秋葉原事件などが刺激になり、連鎖的に無差別事件が起きている、とみる。「無差別事件の容疑者たちは『屈従を強いられてきた人生に憂さ晴らしをしたかった』という意味のことを話す。のびのびと自己肯定感を抱いて生きてくることができなかった人の多さを感じる」と話す。
作田明・聖学院大客員教授(犯罪心理学)も比較的若く、仕事で悩みを抱えていたという点など、秋葉原事件との共通性に注目し、「相当のストレスをため込み、自分で処理できない一方、相談したり、甘えたりする相手もいなかったのではないのか」と分析する。
「家族や親類との関係が希薄だと孤独がさらに深まってしまう。すべてに絶望し、暴力的な行動に出たのではないのか」とみている。