【ワシントン小松健一】北朝鮮の核問題をめぐる6カ国協議の非公式外相会合が23日夕、シンガポールで開催される。核計画申告の具体的な検証方法は確立されておらず、成果は望めない見込みだ。外相会合を次の非核化プロセスにつなげ、6カ国協議を長期的な北東アジア安全保障機構へ発展させる弾みにしたいとの、当初の米国の思惑は外れることになりそうだ。
ブッシュ米政権は、北朝鮮のテロ支援国家指定解除が発効する8月11日までに検証手順を確立し、作業に着手したい意向だ。だが、今月北京で開かれた6カ国協議で、作成した検証手順の草案を北朝鮮に提示したものの、依然回答は得られていない。草案を詰めるための非核化作業部会の日程も決まらない状況だ。
関係筋によると、北朝鮮は核施設への立ち入りについては基本合意しているが、「検証に必要な活動」は限定する構えという。さらに、検証作業では国際原子力機関(IAEA)が「助言協力」という形で関与することで合意しているが、関与の内容については北朝鮮の抵抗もあって、今なお不明確だ。
過去に北朝鮮の核施設検証に携わったIAEAに「継続的に相応の役割を担ってもらうことが検証の確実性を担保する」(6カ国協議筋)との意見が強く、6カ国協議米首席代表、ヒル国務次官補は25日にウィーンに入りIAEAと協議する。
ただ、核計画申告が米国の譲歩で不完全なものとなったように、北朝鮮は検証の具体的内容についても指定解除発効ぎりぎりまで時間稼ぎをして、米国から妥協を引き出す戦術とみられる。
ライス国務長官はこれまで外相会合の目的について、「非核化の次のステップと、6カ国協議の北東アジア安全保障機構への発展の可能性を協議したい」と語っていた。しかし21日には「(シンガポールでの非公式外相)会合にあまり重きを置いていない」と期待値を下げ、「北朝鮮に義務履行を求める非常に強力なメッセージを送ることになる」といら立ちを募らせた。
毎日新聞 2008年7月23日 11時34分(最終更新 7月23日 11時36分)