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【G8洞爺湖サミット オルタナティブ】市民キャンプ地「一触即発」の舞台裏

黒井孝明2008/07/08
筆者らインディーズ・メディアの面々は洞爺湖近くの豊浦町に約200人がテントを張った「市民キャンプ」を訪れた。キャンプ地の入口には大手メディアと警察関係者を拒絶するゲートが。「反G8」行動を控え、緊張感漂うキャンプ地の様子を報告する。
北海道 NPO・NGO NA

【G8洞爺湖サミット オルタナティブ】市民キャンプ地「一触即発」の舞台裏 | <center>雨のなか、集団で駅に向かうキャンプ参加者ら(いずれも7日、虻田郡豊浦町にて、筆者撮影)</center>
雨のなか、集団で駅に向かうキャンプ参加者ら(いずれも7日、虻田郡豊浦町にて、筆者撮影)
 「ワゴンが4台停めてあった。マルキはいない」。市民キャンプ地を抜け出して車で周囲を見回ってきた市民活動家の男性が声を張り上げた。「マルキ」とは機動隊のこと。話を聞いていた活動家らの顔は険しかった。

 北海道虻田郡豊浦町。人口4000人程度のこの地に「G8を問う連絡会」のメンバーなど市民活動家ら約200人がキャンプを張った。洞爺湖サミット開催に合わせ、彼らが宿営地に選んだのはサミット会場に近く、JR室蘭本線が通る礼文(れぶん)駅から車で5分の距離にある豊浦森林公園キャンプ場だ。

 7日正午ごろ、雨に濡れたキャンプ場。市民活動家らには静かな緊張感が漂っていた。午前中のミーティングで海外からの参加者が「豊浦まで電車で行って他のキャンプと合流しよう」と提案したのだ。キャンプ全体の予定にはなかった。

 キャンプ地から最寄駅のJR礼文駅までは徒歩で30分程度。木々に囲まれた途中の道には警察車両とみられる白塗りの車が各所に待機していた。「少人数で出かけては危ない。このキャンプ地を出たら、警察はたちどころに逮捕できる」。ミーティングに参加していた一同に不安が広がった。

 集団で移動した場合はどうなるか。警察はデモ行動とみなすだろう。デモ行動には関係各所への許可申請が必要だが、新提案は許可されていないデモコース約4kmを歩くことになる。

 「途中で一部の参加者が逮捕された場合、このキャンプ地はどうなる」と中年男性が発言した。キャンプ地で待機する活動家も一網打尽にされる。少数の行動が全体に影響を及ぼす。海外参加者に慎重を呼び掛けた。

 海外参加者は首を縦に振らなかった。5日の札幌デモで4人が逮捕されている。彼らの逮捕が不当であることをメディアを通じて明らかにしなければならない、と主張した。

【G8洞爺湖サミット オルタナティブ】市民キャンプ地「一触即発」の舞台裏 | <center>警察や大手メディアの進入をはばむキャンプ入口</center>
警察や大手メディアの進入をはばむキャンプ入口
 ミーティングは午前10時ごろに集会所で始まったが、1、2時間を経ても議論は平行線をたどっていた。彼らの集まりには司会役はいても絶対的なリーダーは見当たらない。大切なことは全体で相談し、互いを尊重することを意識して議論するように決められている。

 結局、昼食を終えてから議論の続きをすることになったが、ほとんどの人間が炊事場には行かず、集会所の前で話し合った。しばらくしてから、海外参加者がキャンプ場の出入り口へ歩き始めた。それにつられるように足音が増えていく。

 「捕まれば最低でも3週間は出てこれない。日本の人にはぜひ参加を控えてほしい」と日本人スタッフがキャンプ場出入り口に集まった日本人に呼びかけた。最終的には本人の判断に任されるのはわかっていても、言わなければならないことだったろう。「私は行かない」と女性の声。「警察にはデモではなく、遠足だといえばいい」。「警察やメディアと直接出会うまで横断幕は隠したほうがいいのでは」。次々と声が上がった。

 4、50人がキャンプ地を出発した。警察やメディアに顔を知られたくない活動家は布で覆う。横断幕は持たないことになった。雨脚が強くなっていくなか、通訳の日本人数名を交えた集団は小道に消えていった。

 筆者は「どうして参加しなかったのか」とキャンプ地に残った若い日本人男性に聞いた。「やはり危険だから」と答える。「危険なのは海外参加者よりも日本人」だからだという。筆者らがそのときいたキャンプ管理棟では、管理者が役場に“遠足”が急に始まったことを伝えていた。

 しばらくして「いまパトカーの音が聞こえなかった?」と一人が言った。「聞こえた聞こえた」と応じる声があった。



 市民キャンプの運営スタッフ中枢にいるAは常に携帯電話を握っていた。「足止めされた?」と携帯電話に向かっていう。“遠足”に参加した人間と話していた。彼らの状況を聞いている。

 どうやらキャンプ地から1kmほどの地点で、警察に道をふさがれたらしい。途中で引き返してきた活動家が詳細な状況を報告した。道をふさいでいたのは機動隊。人数はわからないが、警察は“遠足隊”が引き返すなら、誰も逮捕することはないといっている。

 いつでも出られるよう出入り口近くに車を待機させたAがテントに入ってきた。「まずいことになった。道警(北海道警察)から電話があった」。道警はデモの許可申請書を現地に持ってくるよう求めているという。また、キャンプ参加者の行動を管理できないのか、とも聞かれた。「許可申請書は出せない。出せばBとC(いずれも不詳)が責任を問われる」とAはうなった。そして携帯を握り、現地に連絡した。「絶対に手を出すなといってくれ。みんなを後方に引かせるんだ」。

 “遠足隊”は三々五々キャンプ地に戻ってきた。無事を喜び合う歓声や拍手は聞かれなかった。一度、警察車両がキャンプ出入り口に近づいたが、しばらくして戻って行った。この行動で逮捕者は出なかった。

キャンプ地にバスで向かう途中で検問
 筆者はキャンプ地からJR礼文駅へ向かう車中、キャンプ場管理者と話をした。車窓からは道々に警察車両が停まっているのが見える。通り過ぎる車を逐一確認している様子がうかがえる。一連の騒ぎを見た彼が話したことをまとめると次のようになる。

 「雨さえ降っていなければキャンプの人たちと交流しようと思った。一人ひとりは悪い人たちではない。

 市民キャンプの話がきたときは住民説明会に40人も集まった。(デモと警察の衝突のような)こういうことを心配していた。物々しいものを子どもたちに見せたくない。

 本当は(デモではなく)礼文のきれいな自然を海外の人やマスコミの人にみてもらいたかった。豊浦森林公園はこんなにきれいなキャンプ場なんだよ、と」

◇ ◇ ◇
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