妻のんち(33)は結婚前、京都の大きな病院で看護師を3年9カ月していた。
結婚を機に退職し、その後8年間は主婦業に専念している。しかし次男よっしーも3歳になり、ほぼ毎日幼稚園に通うようになった。子供から目が離せない、どこに行くにも子供が一緒という時期は過ぎ、少し時間にゆとりができた。
一日じゅう家にいても苦にならないインドア派(自称・知的労働者)の私と違い、妻は活発なアウトドア派。体を動かすのが好きだし、人に仕え、喜ばれることで生きがいを感じるタイプなので、看護師は天職だった。わが子のためとは言え、この8年、よく辛抱して家中心の生活を送ったと思う。特に冬は誰かが風邪を引いているような毎日で忍耐が必要だった。
妻は最近、復職を考えている。生活にメリハリをつけたり、人の役に立つ喜びを取り戻したいからだ。
2人でハローワークを訪ねた。「急募」の文字が次々と目に入る。看護師需要は高いようだ。給料もいい。妻の後ろに「国家資格」の4文字が光って見えた。
妻は何度かハローワークに通い、二つの病院の求人をもらってきた。だが「復職は難しそう」と言う。
8年間のブランクによる不安が大きい。新しい薬の名前も用語も分からない。都市部では復職を手助けするための研修があるようだが、妻が調べた限り島原にはなかった。
もう一つは働き方の問題。月曜から金曜まで毎日午前9時~午後5時で働くのはまだ難しい。だが午前中だけ、かつ週3回程度といった“コマ切れ”の募集は、今のところ見つかっていない。
需要側と供給側のニーズの不一致。6月25日の読売新聞には「看護師や保健師などの資格を持ちながら業務に就いていない『潜在看護職員』が全国に約55万人いる」とあった。妻もその1人。ニーズの不一致を解消し、妻たちの潜在力を引き出すのは行政の大事な仕事だと思うんだけどなあ。
フクダさん、マスゾエさん、そう思いません?【山崎太郎・35歳】
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毎日新聞 2008年7月23日 地方版