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東京・八王子の女性2人殺傷:「むしゃくしゃして」/繰り返される凶行(その1)

 ◇仕事うまくいかず--閉店間際、店長「まさか」

 ショッピングセンターに響く悲鳴。「通り魔だ」と叫ぶ声--。無差別の刃物がまた、市民を襲った。京王八王子駅ビルのショッピングセンターで22日夜起きた刺殺事件。「仕事がうまくいかず、むしゃくしゃしてやった。無差別に人を殺そうと思った」。身勝手な男の凶行に、買い物客らは青ざめた。【川崎桂吾、奥野敦史、内橋寿明】

 事件は、午後10時の閉店間際だった9階の書店で起きた。8階にある雑貨店の男性店長(43)は9時半ごろ、上階から「きゃー」という女性の悲鳴を聞いた。8階は既に閉店し、エスカレーターも停止していたため、非常階段を駆け上がると、9階書店の棚と棚の間にエプロンを付けた女性が倒れていた。

 女性は胸に傷を負い、床一面に血が流れていた。店長は書店スタッフとともに女性の手当てを手伝い、「しっかりしろ」などと呼びかけたという。店長は「他の店の人たちと『最近は秋葉原みたいな事件が多いから気を付けよう』と話をしていたところ。まさかこんなことが起こるとは」と声を詰まらせた。 ショッピングセンター10階のお好み焼き店店長の男性は「午後9時半ごろ、ビルの警備員から『通り魔が出た』との電話がかかってきた」という。ちょうど最後の客2人が店を出ようとしていたので、「エレベーターで直接1階に降りてください」と危険に遭わないよう送り出した。「10階には悲鳴は聞こえなかった。警備からの電話がなかったら、事件に気付かず、お客さんをそのまま送り出したかもしれない」と声を震わせた。

 ショッピングセンターの前で友人と待ち合わせをしていた東京都八王子市の男子学生(20)は「すごい人だかりであちこちから『通り魔』と叫び声が聞こえた。次々に警官がビルの中に入り、数分後に髪の長い女性が担架で運ばれてきた。心臓マッサージを受けていた。その後、血まみれになった書店の店員らしき女性が両肩を抱えられ、泣きながら警察車両に乗り込んでいった」と驚いた様子で話していた。

 逮捕された男の自宅前には23日未明、報道陣数十人が詰めかけた。午前1時ごろ、家族とみられる年配の男性が玄関先に姿を見せ、「時々しか帰って来ないので全然分からない」とだけ話した。

 ◇指にけが、休業補償中

 勤務先の航空機部品製造会社(八王子市)によると、男は、今年5月ごろに求人広告を見て応募してきた。試用期間1カ月の条件で働き始めたが、しばらくして指を機械にはさんで仕事ができなくなったという。

 その後、休業補償で生活していたが、今月初めごろにはけがの経過を報告するため面談した。父親も同席したという。その際は「来月から復帰できます。早く仕事がしたい」と意欲をみせていたという。

毎日新聞 2008年7月23日 東京朝刊

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